「人とIT、プロセスの見える化で現場の改善を続ける」。7月14日に始まった富士通のプライベートイベント「富士通フォーラム2005」で、同社代表取締役社長の黒川博昭氏はITを使った現場の改善例を紹介した。
顧客の事例はもちろんだが、自社の改善例も多く発表。「フィールドには、やり残したことがたくさんある」として、ITの積極活用を呼びかけた。
黒川氏が真っ先に紹介したのが富士通の保守サポートの事例。同社の保守サポートは、全国約850カ所のサービス拠点で、120万サイトにおよぶ顧客システムをサポートしている。サービスエンジニアは約8000人で、190万点の部品を配備するパーツセンターは全国300カ所。全体の94%が2時間で現場に駆けつけられるエリアとなっている。
富士通が考えたのは、顧客のサイトをネットワーク化することによる、サポートの効率化とサービス品質の向上だ。「日本中を1つの現場と考えて、顧客をネットワーク化すれば、サービスエンジニアの出動が減る」(黒川氏)。
具体的にはハードウェア障害の予兆を検知して通報するシステムや、構成情報の収集システム、稼働状況のロギングシステムを導入。障害を監視、予知できる体制にした。
新システムの導入によって、同社のUNIXサーバ「PRIMWPOWER」1台に占めるエンジニアの出動率は年間21.4%から17.4%に低下。トラブルの修復時間も2時間21分から1時間41分に下がったという。
黒川氏は、「この結果だけで満足してはいけない」として、稼働状況の自動収集から障害予兆の把握、保守の実施、保守サービスのスピード向上というサイクルを、継続的に続けることが重要と指摘した。
黒川氏は富士通のシステムプロダクト製品の“棚残”(棚卸残高)についても説明した。富士通の製品は5000種以上あり、部品点数は数百万個。1日当たりの在庫データは30万件におよぶ。そして、棚残の管理はそれぞれ個別のシステムで行っていて、確定するまで2週間かかっていた。
富士通は、各システムが出力する明細データを、XMLデータベースエンジンの「Interstage Shunsaku Data Manager」で管理することを決定。複数のシステムから出力されるバラバラな仕様のデータをXMLを使って柔軟に収集できるようにした。
検索機能などを使って「リアルタイムに棚残が見えるようになった」。Shunsakuの導入によって、棚残のデイリー更新が可能になり、確定までの日数は2週間から2日に短縮できたという。
黒川氏は富士通の今後の方向性として、「企業の変化に追随できるITが必要。サービスを軸に情報システムをつなぐことを目指す」と述べ、SOA環境の整備を急ぐ考えを強調した。
黒川氏はSOAの要素として、モニタリング、サービス管理、データ統合を挙げたうえで「特にモニタリングが重要だ。内部統制が注目されている中、トランザクションの監視が1つの解になる」と述べた。
関連記事
- 自動運転車いすや未来の買い物カート――富士通フォーラム
「富士通フォーラム2005」が始まった。愛知万博に出展中の自動運転車いすなど、同社グループの新技術を披露している。 - 富士通、インテグレーション体系をSOAで刷新
- 富士通が電子カルテ拡充、最短3カ月導入の製品も
- 富士通、2010年度末に地球シミュレータの75倍の性能を持つスパコン目指す
- 富士通、営業増益も目標未達
- @IT:NewsInsight
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.