「ITで会社を変えてやる」――その熱意、理解されている?:悲劇は喜劇より偉大か?
IT部門と利用者の間に温度差があるのは常。IT部門の担当者は、理解されずに苦しむ。原因は、システムではなく、コミュニケーション不足だったりしないだろうか(攻めのシステム運用管理)。
ITインフラを構築している部隊と利用者の間に温度差があるのは常である。せっかく作ったシステムが現場に理解されずに悔しい思いをしているIT部門担当者は非常に多いことであろう。しかしこの問題の本質は、理解されないのではなくて、理解してもらおうとしていないだけかもしれない。
素晴らしい社内システムを作った
「ITによって会社を変えてやる」と意気込んでいるA氏が今回の主役である。
IT投資がビジネスの成否に直結するということもあり、世の中には一見便利に見えるITソリューションが山のようにある。熱意に溢れたA氏は燃えていた。素晴らしい社内システムを作るべく、日々遅くまで残って企画書を作った。それが認められ、A氏は無事予算獲得に成功した。この企画書は現在の業務プロセスを忠実に再現するだけに留まらず、部分的にまったく新しい業務プロセスを独自に追加して、業務全体の効率化を意図した野心的な試みの入った力作である。
数ヵ月後、企画書通りの社内システムが完成した。A氏は、我ながら素晴らしい社内システムができたものだという自己満足に浸る反面、果たして従業員はこの素晴らしい社内システムをきちんと使ってくれるか、と一方で不安も覚えるのであった。
社内から猛反発を喰らう
不安は的中した――。
社内リリースしてみると、すぐに社内から猛反発が起きたのだ。現場に相談もなく勝手に業務プロセスが変更されていることに対する不満が爆発したのである。素晴らしいものは言わなくても理解してもらえるという認識が甘かったといわざるを得ない。こういう事態になるとは想定しておらず、システムを現在の業務プロセスに変更するための予算も工数も確保していなかった。社内からは反発の嵐。システム仕様の変更もできない。もはや手詰まりに見えた。
そんなときA氏は会社の先輩から、こういう場合は話し合わないといけないとのアドバイスを受ける。そこでA氏は特に猛反発の大きかった部署の人々と話し合いの場を持ち、まずは現場に相談なく勝手に業務プロセスを変更してシステム化してしまったことを詫びた。
次にどう落とし所を見つけるか長い時間議論を行った。すると意外なことに、A氏が勝手に変更した業務プロセスはA氏の目論見通り業務全体の効率が向上できるという認識で意見が一致し、結果的には何も変更を加えずに新システムを稼動することができたのであった。
教訓
新しいことを行うためには、関係者とコミュニケーションを図ることが非常に重要である。たとえ意見が対立したとしてもきちんと話し合って決めたことであれば、動き出してしまえば問題解決のために全面的に協力してもらえるものである。ITは感情を持った人間が使うものであることをよく意識しておくべきである。
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若葉田町
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