ERP導入の成功の秘けつはITとは無関係なところにあり?
インテンシアのパートナーであるCSIソリューションズによると、ERPパッケージ導入のポイントは意思決定やコミュニケーションといったIT以外の部分にあるという。
インテンシアは8月25日、報道関係者向けの説明会を開催し、CSIソリューションズがインテンシアのERPパッケージ「Movex」を4カ月で導入した事例などを紹介した。
4カ月で導入できた要因を、プロジェクトマネージャを務めたCSIソリューションズ ソリューション事業部東日本ソリューション部部長、納谷悟氏は「IT以外の部分による点が大きい」と説明した。
インテンシアは、スウェーデンに本社を持つERPベンダー。欧州ではERP市場でシェア2位。主力製品であるERPパッケージ「Movex」シリーズは、「ファッション」「食料/飲料」「設備保全」「流通・製造」の4分野に注力し、中堅企業に中心に展開している。
CSIソリューションズはインテンシアの有力パートナー。CSKが65%、IBMが35%を出資しており、CSKが大企業向けのシステムインテグレータ(SIer)であるのに対して、CSIソリューションズは主に中堅規模向けのSIerを担当している。Movexでは現在までに25社の導入事例を経験しているという。
納谷氏が紹介した事例は2件。1件目は外資系のアパレル企業のA社で、Movexの会計機能だけだが、4カ月で導入が完了した。会計機能だけの導入であっても、通常は半年から1年間は掛かり、4カ月での導入はCSIソリューションズの案件の中でも最短だという。ERP導入以前はブランド別の売上データを手入力するなど、かなり手動部分が多かった。
Movexの導入では通常「Implex」という確立された導入手法を用いる。A社の事例では4カ月で導入するために、作業項目をパラレルに設定したほか、A社のCIOとCFOが参画することにより、迅速な意思決定がなされた。さらには、A社側の現場担当者に同社のエース級社員が据えられたことにより、作業の効率化が図れたという。
納谷氏は、「通常、ERP導入時には長時間の会議が頻繁に開催されるが、CIOとCFOが参画することで、会議の“宿題”がなくなり、相当な時間短縮となった」と分析。また、「一方、担当者には相当な負荷が掛かり、深夜残業や休日出勤を余儀なくされた。プロジェクト中は何度か深夜のオフィスで“ガス抜き”をした」(納谷氏)といった交流により、ユーザーとベンダーの目標共有を図ったという。
同氏はこのプロジェクトの成功要因に、「初期段階で適切なプロジェクト設計図を描いた」「CIO、CFOの参画により意思決定のスピードを上げる」「エース級社員の導入」の3点を挙げた。
2件目の事例は、東証一部上場の機械製造業のB社。B社は海外に20を超える子会社を有しており、連結時の効率向上のためにMovexを導入。このケースの場合、最大の問題は各国で異なる勘定科目の体系を統一する点であり、プロジェクト当初からこの問題の調整に取り組んだという。
最終的には勘定科目を世界で統一し、科目名を英語に統一することを目指し、結果として97%程度統一できた。統一できなかった科目については変換テーブルを利用し、日本の科目に合うように変換する。また、日本人駐在員がいない海外事業所などでは、コミュニケーションで苦労したという。
結果として連結作業を従来の1カ月から1週間に短縮し、IR情報の早期開示や月次管理連結などを実現した。納谷氏はB社の事例の成功ポイントに「勘定科目の統一を最初から一番の難題として認識し、最初から取り組んだ点が大きい」を挙げた。
同氏は、2つの事例について、「結局、両方の事例とも、ITとあまり関係のない部分が重要な成功要因となっている。そのほか、アドオンやカスタマイズを抑制し、意思決定者を参画させることなども重要なポイントだ」と説明した。
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