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誤解から生まれるe文書法の落とし穴e文書法の活用術(3/3 ページ)

企業のIT化に直接影響してくる「e文書法」。何かの対策を企業に迫るものではないが、誤解したままでいると、思わぬ落とし穴にはまり込む可能性がある。

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・企業における文書の電子化を義務付けたものではない

 e文書法は企業に何らかの対策や措置をすぐに迫ることはない。文書を電子化するかどうかは、あくまで企業の任意である。

・企業における電子文書の要件を直接定めたものではない

 企業が文書を電子化する場合、どのような要件で電子化すれば十分であるかが決まるわけではない。法に関係する報告書で、電子文書の要件について述べられているが、それは最低限のことを述べているだけだ。それで十分だとは言っていない。また、定性的にしか述べられていない事項もあり、実際の電子化に際して何をすべきかを完全に決定できるようになっていない。

 現時点で「e文書法対応」などと銘打った説明があるとすれば、それは必要条件を満たしてはいても、十分条件を満たしているはずがないということは確かなのである。そのことに踊らされないようにしなければならない。これらについては、次回、詳細に解説しよう。

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 企業に関する法令の系列はおおまかに、3つに分けて考えられる。1つ目は刑法に代表されるもので、違反すれば刑事罰を課せられることがあるもの。2つ目は民法に代表されるもので民事責任を問うもので、疑義を受ければ損害賠償などの請求を受けることにもなる。3つ目は行政が企業を監督するものであり、違反すれば行政処分や刑事罰などを受ける場合もある。

 分かりやすく単純化すると、1つ目は善悪の区別を考えれば分かるような不正行為を罰し、2つ目はBtoBやBtoCなどのビジネスに関する全般を扱う。3つ目は行政として企業に何かを義務付けたり制限・禁止したりする。IT部門としては、もちろん、この3つすべてにおいてコンプライアンスを考えなければならない。

 その中で、企業のIT化に対する影響を考えれば、1つ目は悪いことをするなというものであるから議論の余地はない。それに対して、2つ目はIT化を善悪の問題としてとらえるのではなく、定めによって判断することになる。

 とはいえ、文書や記録を電子化できるか否かは、情報の形がデジタルかそうでないかという形式の問題にすぎない。法的な問題を生じるかもしれない可能性の点では、電子化しない方が無難であることが多いといえる。しかし、企業間の契約や取引などでのケースであれば、当事者間で事前の合意によって事実上そのような法的なリスクはなくなる。IT化よって不利になることはない。

 これら2つに対して、3つ目は異なる。行政などが企業に保存や提出を求める文書や記録については、その形式を制限していることが多い。過去にはその様式や保管方法などが制限されてきたが、電子化を認めるか認めないかについても制限する場合があるため、企業のIT化に直接影響を及ぼす。したがって、IT部門が積極的に知るべき法令は3つ目に類するものである。

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佐藤慶浩

日本ヒューレット・パッカードの個人情報保護対策室長。経済産業省「文書の電磁的保存等に関する検討委員会」委員などを歴任し、現在は内閣官房情報セキュリティセンター内閣参事官補佐も併任している

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