急成長ベンチャーが実現した「未来の大企業」としてのERP導入 :構造改革としての2007年問題(3/3 ページ)
「2007年問題」への対応方法は幾つかある。1つが旧システムを思い切ってERPパッケージで刷新する方法だ。「将来の大企業」を目指して急成長中のベンチャー企業のERP導入を取材した。
苦戦を強いられた導入プロジェクト
E-Business Suite導入プロジェクトには、ミマキエンジニアリングから3人、東洋ビジネスエンジニアリングから6名が参加。だが、プロジェクトは一筋縄には進行しなかった。
一般に、ERPパッケージと業務アプリケーションの違いは、全社最適の視点で設計されているかどうかにある。つまり、製造、営業、研究開発など、さまざまな部門のシステム間に最適化されたデータが有機的に流れることで、在庫管理や人事管理、情報共有などさまざまなメリットを生み出すことになる。データは企業内を駆け巡る「血液」とも表現される。
だが、ミマキエンジニアリングの導入プロジェクトでは、ERPのこうした全社最適の視点に苦戦を強いられた。
「旧システムは言われたことだけを行うようなシステムだったがERPは違った。部門間をまたがった仕訳作業など、システムが自ら進んでさまざまなことをしてくれる。頭のいい人が作ったのか歴史がそうさせたのか分からないが、よくできている。それが故に、正しく導入しない限り、決して正しく動くことはない」(池田社長)
端的に言えば、導入プロジェクトにおいて、ERPで処理した業務データの数字が合わなかった。ある部門で入力したデータが間違っていたり、入れ方が違ったりしていれば、結果として全社のデータが狂ってしまう。個別のシステムごとに「最適化」し、データを確定していけない点がERP導入の難しいところだ。
このトラブルの原因は、導入時のテストにあった。ERPが処理したデータが業務的に正しいかを知るためには、旧システムにおける実行結果と比較しなくては分からない。だが、同社の導入プロジェクトでは、システムとしてのERPを短期間で導入するという目標に気をとられてしまったのか、新旧の比較をせずに、いきなり基幹システムを切り替えてしまったのだ
「データとして何が正しいかをチェックせず、新システムにある日突然切り替えてしまった。これでは、前後のデータのどちらが正しくて、どちらが間違っているかが分からないため、検証のしようがないことに当時は明確には気付いていなかった。当然だが、新旧両方のシステムの違いを移行前にもっと理解しておくべきだった」(システム導入プロジェクトを担当した経営情報システム部 翠川祥司氏)
その後、紆余曲折を経たものの、経営陣がOracle E-Business Suiteを活用したビジネス展開というシナリオを曲げなかったこと、経営情報システム部を中心とする運用安定化努力、それに東洋ビジネスエンジニアリングのサポートも実り、現在は安定に向かっているという。現在の課題は、帳票システムの使い勝手がいまひとつであることへの対応や、ビジネスインテリジェンスを活用することによって日々蓄積するデータを業務に生かしていくことなどとしている。
同社のERP導入では、業務要件への精通や、新旧システムの十分な理解など、だれもが理解している点であるにもかかわらず、結局そこが原因で苦労を強いられた。ERPの導入を検討する企業は、改めて、こうした基本的なポイントが非常に重要であることを認識する必要がある。
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