2007年問題をAIで解決する:構造改革としての2007年問題(2/2 ページ)
2007年問題の本質は企業の根幹となるシステムを特定の技術者に依存してきた体質にある。それをカバーする技術として、かつて一世を風靡したエキスパートシステムに注目してみてはいかがだろう。
今なら実現可能?
AIに対する過剰な期待に十分応えられなかったこともあり、1980年代後半にエキスパートシステムという言葉は、急激に廃れてしまう。むしろ、エキスパートシステムは普通のシステムの中に取り込まれ、特別にそれをAIの一部として注目することがなくなったとも言える。
身近な例では、乗り換え案内の仕組みや、代筆ソフト、インストール時のウィザードの仕組みなどは、エキスパートシステムの考え方が応用され一般化したものといえる。
ここで、2007年問題に話を戻してみる。果たして、当時エキスパートシステムと呼ばれていた仕組みは、今話題になっている2007問題の解決の手段になり得るのだろうか。1980年代に比べ、コンピュータの性能は飛躍的に向上している。当時であれば難しかった大量な知識ベースも、現状のシステムであれば難なく運用できるであろう。推論エンジン部分の計算処理能力やメモリ空間も、当時の数千倍から数万倍のものを、安価に実現できるようになった。
さらに、当時では難しかったマルチメディアデータを取り扱うことも容易だ。テキストデータだけで専門家の知識を表現するには限界もあったが、現在ならば、図やイメージ、音声、動画も含めて、知識のデータベース化によって2007問題の解決が可能かどうかを判断することができる。また、文章でルール化しにくいノウハウを、パターン認識などの方法で学習し、知識ベースに加えることも可能であろう。
このように、基盤となる技術環境は整い、専門家の作業や判断をシステムに代行させることが可能になりつつある。とはいえ、専門家から知識を抽出し、それを知識ベースに入れたり、ルール化したりする作業はなくならない。いや、むしろ専門知識を大量に活用できる分、作業負荷は当時の数倍から数十倍に膨れ上がるかもしれない。
2007年問題の解決策としてのエキスパートシステムに多大な期待を抱いてしまうと、当時と同様、理想と現実のギャップに陥り、失望する可能性もある。システムに代行させる範囲をきっちりと見極め、時代に即したエキスパートシステムを構築できれば、製造現場などにおける2007年問題解決の強力な武器になるかもしれない。
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