誰も知らない会計参与の意義と役割:こんな時期だからこそ知っておきたい企業のファイナンス(2/2 ページ)
新会社法により創設された株式会社の機関である「会計参与」。この機関がどのような役割を担うかについては、意外と知らない人が多い。ここでは会計参与の設置目的からその職務権限などを解説する。
5.会計参与の職務権限
会計参与は、取締役と共同して会社の計算書類およびその附属明細書などを作成し、かつ計算書類などの作成の経過を記した「会計参与報告」書を作成しなければなりません。その計算書類などの作成に当たって、会計参与が従うべき会計のルールが、最近公表された「中小企業の会計に関する指針」です。
このように、会計参与設置会社では、取締役または執行役が単独で計算書類などを作成することはできません。従って、会計参与が了承しなければ、いつまでも計算書類などが完成しないという困った事態を引き起こします。
計算書類を作成するために、会計参与は、いつでも会計帳簿またはこれに関する資料を閲覧・謄写し、取締役や従業員に対して会計に関する報告を求めることができます。さらに、その職務の遂行上必要があるときには、子会社に対して会計に関する報告を求めたり、当該会社や子会社の業務および財産の状況の調査を行えます。
6.会計参与の義務
会計参与は、その職務を行うに際し、取締役の不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実を発見したときには、遅滞なく、これを株主または監査役に報告する義務があります。会計参与がこの義務を怠り、会社に損害を与えた場合には、損害賠償責任を負うことになります。
また、取締役会を設置する会社の会計参与は、計算書類などの承認にかかる取締役会に出席し、必要があれば、意見を述べなければなりません。
7.株主総会における意見陳述
計算書類の作成に関する事項について、会計参与が取締役と意見を異にするときには、会計参与は、株主総会の場において意見を述べることができます。
8.計算書類などの備え置き
計算書類などは、当該会計参与が定めた場所に5年間備え置かれ、株主や債権者は、いつでも、会計参与に対し、計算書類などの閲覧・コピーの請求をすることができます。
9.会計参与の第三者に対する責任
会計参与が計算書類などに記載し、または記録すべき事項に、虚偽の記載または記録をしたというような悪意または重大な過失があったときには、第三者に対して損害賠償責任を負うことになります。
例えば、地元の銀行がある会社の会計参与が作成した決算書を信用して、かなりの融資をしていたが、その後、その会計参与が作成した計算書類などに重大な粉飾があったことが発覚し、会社は倒産、銀行の融資は当然焦げついてしまった、というケースも考えられます。そうなれば、銀行としては、会計参与に対し第三者責任を追及することになります。
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