「日本史上初」の人口減と2007年問題が重なって、どうする?:構造改革としての2007年問題(3/3 ページ)
2007年問題は、少子化の流れと相まって日本経済にも打撃を与えることが心配されている。日本企業はどのように対処すればいいのか。ダイキン工業や日立製作所はユニークな取り組みを行っている。
技能の伝承から経験、ノウハウへ
ダイキン工業は、技能継承の中核となる人材を育てる「マイスター(卓越技能者)制度」を創設した。また、シャープも「モノづくり匠(たくみ)制度」を作り、製造現場で働く約4000人の中から、高度な技能を持ち、後進を育てられる人材を「匠」に認定した。この制度を核に技能継承を進めている。
日立製作所もこうした取り組みを1つの事業部として組織化し、ITを活用して技能を後継者に伝えようとしている。社内組織の「モノづくり技術事業部」が推進する「eマイスター(師匠)活動」がそれだ。職人が持つ技能を静止画、動画などで収録してデータベース化、広く社内で共有していこうとしている。
実は、前回触れたように、2007年問題を最初に指摘したIT業界でも、最近になってこの問題に対する論調が変わってきている。当初は、「基幹業務を支えるメインフレームの技術者がいなくなる」ことが問題視されていたが、現在ではこうしたプログラミングテクニックというよりも、業務を把握しシステムに落とし込むスキルが失われるという問題に発展してきた。単なる技能よりも、経験やノウハウといったものが重要だという認識に変わってきたということである。
IT業界では運用管理の手本としてITIL(IT Infrastructure Library)が注目されている。こうした運用業務プロセスは、昔なら現場の運用管理の技術者が等しく、当たり前のこととして備えているものだった。しかしそうした知識やノウハウを備えた人たちが少なくなったため、これを体系化したITILがいま脚光を浴びているということが言える。
つまり2007年問題の影響も、単に「技能が失われる」というレベルから、より広がりを見せているのだ。ベテラン社員の経験やノウハウが失われるということに対し、いかにその経験、ノウハウを継承し共有するかという問題こそが重要という認識に変わってきた。これに対しては、どのような対策があるのか、引き続き考えていきたい。
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