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現場力を鍛えるBI活用に立ちはだかる壁現場力を鍛えるこれからのBI:(2/3 ページ)

前回、BIを現場の実務に直結した形で利用する傾向が強まっているという説明をした。今回は、そうした傾向に水をさす、組織的な問題について論じてみたい。内部統制など経営の透明性を図るためにもBIの利用は今後、不可欠なものになっていくと考えられるが、ツールを導入すれば全てうまくいくというものではない。情報活用につまづいてしまう落とし穴を探る。

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中堅・中小企業のBI活用はこれから?

BIという言葉については詳しく知らない、もしくは、興味はないといいながらも、仕事の中で常にデータを取り出し、分析をし、戦略を練るという一連の作業を繰り返しているケースがある。これは客観的にみれば、まさにBIの活用である。したがって、無関心層も依然としてあり、最近は少しずつ増えているからといって、BIが意味を失っていくということにはならない。

データ活用そのものに無関心ということであれば、これは大いに問題だが、ERP導入がほぼ一巡しているといわれる大手企業ではまずそうしたことはないだろう。中堅・中小企業ではどうだろうか。ノークリサーチ代表の伊嶋謙二氏は、「中堅・中小企業におけるBIということでは、ほとんど普及していないのが実態。いわゆるパッケージやソリューションという形で提案されて導入されているケースは稀だ。それはいわゆる戦略的なIT導入と言う観点をユーザが持っていないこと(期待していない)とベンダやS I e rが提案していないからだ」と語る。

BIツールの普及については非常にさびしい実態が浮きあがっているわけだが、取材の中で、BI活用そのものの中にもいわゆる「日本的」ともいえる企業の特徴の一部が、有効なデータ活用の妨げになっていると感じざるを得ないことがあった。具体的には、年功序列と側近経営である。

過去の成功体験への固執と情報の遮断

年功序列というのはキャリア積み上げ型だから、こうしたシステムの中で組織の上層部に上がってきた人にとって、どうしてもこれまでの経験を絶対視しやすくなる。いくらデータを解析してインテリジェンスを導きだしたとしても、これまでの成功体験が判断基準の上位にきてしまい、現実のデータから導きだした戦略を退けてしまうこともあるようだ。海外の企業は、短いスパンで経営者が変わることが多い。新任の役員は、着任後すぐに会社の現状を把握して、戦略を打ち出す必要があるので、データを重視する。その会社で積み上げた成功体験がない分、真正面から会社の現状、問題点と向き合える。

側近経営というのは、社長の周りに必要な情報を伝える役割の人間が常にいて、現場と経営層がダイレクトに意思疎通しにくい組織経営のことだ。こうした傾向が強い会社のトップはいつも側近から情報を得ているので、BIによる情報活用について無関心な場合が多いという。これほど極端でなくとも、上へ行けば行くほど、情報活用に無関心になっていくケースはいまだに多いが、そもそもそうした傾向を持った会社が、業績が上り調子ということは考えにくい。

 過去の成功体験への固執と情報の遮断、この二つが現実の数字、そしてそこから導きだされた知恵を見えなくしてしまう。

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