「アイ・セイフティ」実験が提案する未来の子どもたちの防犯と交通安全:激変! 地方自治体の現実(3/3 ページ)
街の価値を「安全」というブランドで向上させようとする取り組みが東急線沿線で進みつつある。ここでは、特に子どもの安全を確保するための新たな試みとして横浜市青葉区が行ったアイ・セイフティ実験を紹介する。
学校給食のモデルを安全対策に取り入れたい
このような安全に対するサービスは自治体が主体となることが考えられるが、実際には難しい面もある。自治体が主体となると、すべての人々にサービスを提供しなくてはいけないため、サービスに関するハードルが高くなるからだ。
「今回の実験のようにICタグを持っているユーザーにサービスを限定しないと、サービスを実用化することは難しい。サービスを受ける住民がコスト負担をして、それを自治体かNPOがサポートするという体制も考えられる。たとえば、学校給食は保護者がコスト負担しているが、それと同じようなモデルが適用できるかもしれない」(堀間氏)
NTTデータは、地域の防犯や防災に関する情報をメールで配信できる「アイ・セイフティ・メール」を製品として提供する予定。また、学校などから情報提供を電話、メール、ファクスなどの複数メディアで届ける「FairCast-子ども安全連絡網」というサービスも2006年7月から提供する。
「最初は地域へのメール配信やグループウェアから提供し、住民の意識が高まったところで、最もニーズが高い安全・防犯に関するサービスをサービスインフラに載せていくという方式が考えられる。サービスインフラを構築して、複数のサービスを展開することでコストを下げていきたい」(堀間氏)
今回、実験に参加したケーブルテレビ会社のイッツ・コミュニケーションズ、警備会社の東急セキュリティはどちらも東急グループの一員であり、東急線沿線の街の価値を「安全」というブランドで向上させることを考えている。今回の実験も参加各社が安全という同じ目標を志向した結果、実施された。安全を確保するシステムを企業が提供して、住民と自治体がある程度のコスト負担をすれば、近い将来、新しい形で地域の安全を確保できる可能性がある。そのためにはサービスの運営全体を取りまとめる自治体やNPOの役目が重要になるだろう。
子どもの安全を確保するための新たな試みを進める自治体は、このほかにも幾つか存在する。同特集では今回の横浜市青葉区のほか、都市部の自治体に対してこの分野に対する取り組みを取材した。こちらについても近日中にお届けする予定だ。
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