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今なぜ、マネジメントの時代なのかマネジメントイニシアチブ時代に向けて――7つの提言(1/2 ページ)

組織にとって今後ますますマネジメントの仕組みを見直すことが重要になってきた。そこで本企画では、「マネジメントイニシアチブ時代に向けて」と銘打ち、組織として技術(IT)とマネジメントの融合がカギとなる、新しいマネジメントの仕組みをどう確立していくべきか、について7つの提言を行う。今回はその前段として、ITマネジメントが叫ばれる時代背景を考察してみる。

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技術の進化が新たなリスクを生む時代

 19世紀を産業化の時代とするならば、20世紀は技術革新とマネジメントの時代だったといわれる。1900年代初めの科学的管理法の登場から、フォードの大量生産ライン、組織論の構築、80年代の日本の製造業を支えたQC(品質管理)など、さまざまなマネジメント手法が脚光を浴びた。こうしたマネジメントフレームワークが登場した背景には、科学技術が飛躍的に進歩し、モノ作りの技術が進んだことがある。技術の発展が、新しいマネジメント手法を生み出し、あるいは新しい手法が必要とされたといえよう。

 技術の進歩という点で見れば、90年代以降は情報技術が飛躍的に進化し、企業の情報システムや社会の中で急速にその存在感を増した。コンピュータとネットワークが企業活動や社会生活の重要な基盤となったことは誰も認めるところだ。一方で、情報技術に限らず、技術が進化・普及し、社会に影響を及ぼすようになると、社会に存在する組織、人間は新しい仕事のモデルやリスクに直面する。ネットを活用したドットコムカンパニーの台頭や、一人ひとりがパソコンを保有したことによる仕事の革新的な変化など、仕事自身のモデルに大きな変化が起こった。また、20世紀後半の自動車社会の到来は、人間に交通事故というリスクをもたらし、排ガスという環境問題を引き起こした。同様に情報技術、ことにインターネットの発展は、不正アクセスやフィッシング詐欺、カード偽造などのデジタル犯罪を生み出したり、個人情報の取り扱いなど多くの問題が表面化してきたことは周知の通りだ。

 こうした技術の発展に伴って仕事のモデルやリスク・社会問題が大きくなると、新しい社会のシステム(仕組み)が必要になってくる。そこで、自動車社会の進展による道路交通法や排ガス規制法、情報技術の進化による不正アクセス法や個人情報保護法といった新たな法整備やルールづくりでの対応が求められてきた。それとともに、技術進化に呼応して技術によって問題を解決しようとする試みが続けられてきた。昨今の情報セキュリティ対策技術の進展は、その最たる事象である。

技術とマネジメントの融合が不可欠な時代

 ところが、技術による対策が期待されたほど効果を上げないことも現実である。自動車業界は半世紀にもわたって安全技術の開発・進展を試みているものの、国内では相変わらず毎年1万人近い人が交通事故で命を落としている。また、さまざまなセキュリティ対策技術が登場しても、インターネットを使った犯罪や情報漏えいは次々と起こっている。つまりは、新しい法律あるいは技術を取り込んだ新しい社会の仕組みをマネジメントしていくことが必要とされているのである。

 企業経営においてもITの急激な技術変化に伴い、ビジネスモデルも競争原理も激変した。それに呼応して、新たな社会問題やリスクに対処するための法律や組織統制・ガイドライン・モラルなどへの対応が今まで以上に求められている。企業コンプライアンスやITガバナンスなどが盛んに叫ばれるようになったことが、それを如実に物語っている。ビジネスプロセスがITなくして回らなくなりつつある現在、新たな課題やリスクに対応するためには、その技術を活用することが必要条件になった。しかし、先に述べた過去の例からも技術だけでは解決できないことは明らかだ。ITを活用する主人公である組織とそれに属する人が最大のリスク要因となってきたことを考えれば、そのリスクを担保するためには技術だけでは到底無理であり、技術とマネジメントの融合が不可欠になってきているのである。

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