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「ノンコア業務」に投資し過ぎていませんか?SAP BUSINESS SYMPOSIUM '06レポート

SAPジャパンは「SAP Business Symposium '06」を東京国際フォーラムで開催した。「キャズム」などの執筆で世界的に知られるジェフリー・ムーア氏が登場し、日本企業の今後の戦略に関してヒントを示した。

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 SAPジャパンは7月21日、今後のITがよりビジネス主導型になることを紹介するコンファレンス「SAP Business Symposium '06」を東京国際フォーラムで開催した。基調講演には、「キャズム」などの執筆で世界的に知られる米TCG Advisorsのマネージングディレクターであるジェフリー・ムーア氏が登場し、日本企業の今後の戦略に関してヒントを示した。


1991年刊行された「キャズム」はハイテク製品を成功に導くマーケティングのバイブルとして知られている

 この日、同氏は、「他社への差別化要素となる“コア”に注力するためにイノベーションには集中的に投資すべき」と強調した。一方で、それ以外のすべてを「コンテキスト」と呼び、そこには標準化およびエンジニアリング化で対応するべきであるとしている。

 だが、実際には、過去の成功体験などによって、企業全体がコンテキストに固執するケースも多く、その場合には身動きが取れなくなってしまうという。そこで示されたのが「シックスレバーモデル」だ。これは、ミッションクリティカルなコンテキストから人材などのリソースを抽出し、再配分する取り組みを指す。

 シックスレバーモデルの最初のステップは、業務におけるオペレーションを集中化するための意思決定機関を構築すること。単一の権限に置くことで、重複作業による無駄を排除することが重要になる。具体的には、プロセスを「標準化」することで、コスト削減とリスクの最小化を図ることが目的。

 第2ステップは、業務を遂行するための情報システムを「コンポーネント化」するプロセスだ。また、継続的なコスト削減を図るためにインタフェースを標準化する作業もここに含まれる。さらに、余分なステップを減らし、自動化を進め、残りのオペレーションを合理化、低コストのコンポーネントに置き換える。

 第3のステップでは、残りのプロセスのパフォーマンスを管理した上で、それをアウトソーシングによって完全に企業の外に追い出し、以後の投資を最小化する。ここでは、委託するベンダーの利用する監視と管理のシステムをサービスレベルアグリーメント(SLA)に組み入れる。

SAPの戦略は?

 SAPの戦略は、ここでのアウトソース先になることだ。コアではない業務すべてを標準化されたSAPのアプリケーションやサービスで構成することで、ユーザー企業はコア業務にリソースを最大限に割くことができるようになるというシナリオだ。

 午後のセッションで「ビジネスプロセスの進化のためにSAPができること」をテーマにセッションを行った、同社バイスプレジデントでソリューション&マーケティング本部長を務める安田誠氏は、「顧客の事業にしっかりと組み込まれたITを“エンタープライズSOA”として提供する」と話す。


バイスプレジデントでソリューション&マーケティング本部長を務める安田誠氏

 同社は2003年以来、自社のアプリケーション製品のSOA化を進めてきたが、SOAではなく「ESA(Enterprise Service Architecture)」というSAP独自の呼び方をしていた。これについては、「分かりづらい」「SOAならSOAと言った方がいい」といった声もあり、それに沿ったのかは定かではないが、6月からエンタープライズSOAとメッセージを変えた。

 技術的には特別な変化はない。ERP、SCM、PLM、CRMといった各システム上にミドルウェアであるNetWeaverをはさみ、各システムに実装されている機能をWebサービスによってコンポーネント化、それを自在に組み合わせて「コンポジットアプリケーション」という新たなアプリケーションを構築する。SOAのコンセプトそのものといえる。

 SAPは今回、Business Symposiumという言葉から分かるように、ITらしい言葉やフレーズを使わないよう最大限の努力をしている。「SAPはビジネスプロセスプラットフォームになります」という日本法人社長のロバート・エンスリン氏の言葉からも分かるように、同社は、ITがビジネスそのものであることをさらに強調していく考えだ。


ロバート・エンスリン社長

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