Exchangeのアプライアンス化を目指すMicrosoft
MicrosoftのExchange Serverの開発チームにとっての最大の課題と目標の1つは、移行と運用の大幅な自動化にあるが、市場はもっと複雑な問題をMicrosoftに投げかけている。
米国eWEEK編集部注:ミッションクリティカルな電子メール/スケジューラ/メッセージング市場での企業ニーズに対応することを目指したMicrosoftの計画にスポットライトを当てた記事を数回にわたって連載する。今回はその第2回目である。
MicrosoftのExchange Serverの開発チームにとっての最大の課題と目標の1つが、このメール/スケジューラ/メッセージング製品を、移行と運用を大幅に自動化するアプライアンス製品に近いものにすることである。
しかしExchange Server製品グループのゼネラルマネジャー、テリー・マイヤーソン氏がeWEEKに語ったところによると、生まれて間もないアプライアンスソリューション市場は、Exchangeそれ自体よりも大きな問題をMicrosoftに投げかけているという。
Exchangeの複雑さを緩和する必要性を感じていた開発チームは、開発中の「Exchange 2007」製品ならびに「Exchange Server Best Practices Analyzer」(ExBPA)において、診断機能や「Monad」(現在はWindows PowerShellと呼ばれる)などを通じて簡素化に向けた具体的なステップを踏み出した。しかしマイヤーソン氏によると、自動移行/運用については「われわれが現時点でまだ到達していない」レベルが存在するという。
「これはExchangeが目指すべき素晴らしいビジョンだ。Exchange 2007ではそこまで到達できない。しかしその次のバージョン(Exchange 14)では、ユーザーに『DellやHPのWebサイトからExchange Serverを購入し、30日間テストして気に入らなかったら返品してもらって構わない』と胸を張って言えるようになるだろう」とマイヤーソン氏は話す。
しかし、Exchangeチームはこの目標に近いところまで来たそうだ。ExBPAはExchange環境をスキャンして不備がないかどうか把握し、規範的なガイダンスを提供してくれる。「まだ目標まで隔たりがあるが、いずれ到達するだろう」と同氏は言う。
しかし、誰もがこの見方にうなずいているわけではないようだ。ExBPAは、Exchangeの不適切な配備の可能性を分析する一時しのぎ的なツールに過ぎない、と指摘する管理者もいる。
ある管理者はeWEEKの取材で、「Exchangeを配備する方法は非常に数多く存在するため、Microsoftはこの6年間にわたり、電子メールシステムの障害に関する問い合わせの対応に追われてきた。ExBPAは、同社がサポートコストを削減するために必要なメカニズムなのだ」と語っている。
またマイヤーソン氏は、開発チームが直面しているもう1つのチャレンジとして、この製品には3つの主要なユーザー層が存在することを挙げている。第1のユーザー層はIT意思決定者やCIO(最高情報責任者)で、彼らはコスト削減、信頼性、セキュリティ、コンプライアンス(法令順守)を重視する。2番目は管理者で、彼らは複雑さという問題に関心を持っている。3番目はエンドユーザーで、彼らは自分が使用するすべてのデバイスを通じて極めてシームレスな環境を求める。
「そしてわれわれは、これら3つのタイプのユーザーをすべて満足させなければならないのだ」とマイヤーソン氏は話す。
一方、Exchange Server製品グループのコーポレートバイスプレジデント、デイブ・トンプソン氏がeWEEKに語ったところによると、Exchange 2007は完全なスクリプト化に対応しており、アプライアンス的なサービス提供が可能なインフラを備えているという。
「Exchangeは現在、個別の構成を作成することができるようになっている。Exchangeはさまざまな構成で利用されており、1台のアプライアンスではこれらすべての要求に対応することができない」とトンプソン氏は話す。
Microsoftの元Exchange担当幹部で、現在はワシントン州レドモンドにあるAzaleosのCTO(最高技術責任者)を務めるキース・マッコール氏は、Exchange 2007はアプライアンスのフォームファクターに適していると話す。Azaleosでは、リモートメンテナンスおよびプロアクティブ監視機能を備えた管理型Exchangeアプライアンスを提供している。
マッコール氏によると、エンタープライズ電子メールメッセージングシステムはコモディティ化したため、これを電話システムのように可用性の高いユーティリティとして運用することがIT部門に求められているという。
「Azaleosのアプライアンスは、Exchange 2007では提供されない自動移行/運用機能を付加することにより、Exchangeをユーティリティ化する」とマッコール氏は説明する。
しかしトンプソン氏は、基本的にExchangeをアプライアンスとして提供する製品として、MicrosoftのSmall Business Serverがあると指摘する。「われわれの目標は、広範に利用することができ、個々のユーザー層にできるだけシンプルな環境を提供するコア製品を開発することである」と同氏は語る。
しかしマッコール氏は、Small Business ServerはExchangeをアプライアンスとして提供するものではないと反論する。同製品をサーバにバンドルすることはできるが、その場合でも構成と管理が必要とされるという。さらに同氏は、Exchange Server 2007では5種類のサーバロールを備えた新しいモジュラー型システムが採用されると指摘する。
「Exchange 2003では2つないし3つのロールだったのに対し、Exchange 2007では5種類ものロールがあり、企業各社は規模の大小を問わず、これらのロールをサポートするために電子メールサーバをどのように配備するのか考えなければならない」とマッコール氏は話す。
さらにマッコール氏は、「Exchange 2007で高可用性を必要とするユーザーは、5つのロールのそれぞれに2台のハードウェアサーバを割り当てることも検討する必要があるだろう。システムをクラスタ化して冗長性を実現したり、Microsoftが毎年提供する数百ものパッチが可用性に与える影響を少なくするためである」と付け加える。
同氏によると、Exchangeのさまざまなロールを運用する上での課題に対処するための費用効果の高い方法として、HPやIBMのブレードサーバ(IBMのBladeCenterシャーシは14基のサーバブレードをサポート)の利用が増える可能性もあるという。
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