問われるGPMOの調整機能:崖っぷち!電子政府〜迷走する4500億円プロジェクトの行方・第3回(2/2 ページ)
内閣官房に新設された「電子政府推進管理室」(GPMO:ガバメント・プログラム・マネジメント・オフィス)は、迷走する電子政府プロジェクトの調整機能を果たすことができるのか――。
合言葉はLOHAS化
例えば、A省がある民間企業から資材調達する場合、そのデータは予算執行等管理システム(開発担当・経産省)に入力され、決済の是非が判断される。その債務情報は財政当局の官庁会計事務データ通信システム(同・財務省)へ転送され、承認されれば、国庫からの支払い情報として日本銀行へ通知される。ここで初めて日銀は当該企業の取引銀行へ代金を振り込むのだ。
つまり、予算執行と会計事務のシステムは密接に連動しているが、A省や財政当局の職員がそれにアクセスするには、職務権限が与えられていることが前提になる。行政官はそれぞれ所掌事務に基づいて権限が決まっており、例えば、各省庁会計課の課長補佐は予算執行や会計事務のシステムを操作できるが、所掌外であれば局長であってもアクセスはできない。こうした職務権限をIDとパスワードで認証するのが「職員等利用者認証基盤システム」なのだ。
文字通りすべての電子政府の基盤となるシステムである。が、その完成予定がみえない。他の府省共通システムは原則2008年の運用開始が見込まれているが、認証基盤の仕様次第ではシステムの改変が必要になる。大幅な手戻りが予想されるのだ。
だからこそ、LOHAS(ロハス)化!―。
GPMOと一部省庁の現場では今、性急に結果を求めるのではなく、継続性に基づく、ゆとりあるオルタナティヴ(代替計画)を模索するこの標語が、合言葉となりつつある。つまり、最適化計画を改めて検証し、実行可能な開発スケジュールを再設定することだ。その過程で不要不急なシステムは捨てる英断、すなわち、行政官が最も嫌う「誤りを認める」勇気が問われるだろう。最後にある中央省庁の幹部がつぶやいた。
「電子政府は単なる業務の電子化ではない。結果責任を問われない役人、信賞必罰が曖昧な役人のモラルを変えることだ……」
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