システム完成後に問われる経営センスとは:企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第8回(2/2 ページ)
稼働を始めたシステムに対するその後の取り組み方が、システムの成否を決める。経営者や幹部が押さえておくべき留意点について論じる。
徹底したシステム活用をDNAまで昇華せよ
実務的テーマは、意識・体制の問題、システムメンテナンスの問題、システムそのものの問題に分けることができる。いずれも多くの問題を抱えるが、代表例で示そう。
システムが完成するや従業員の教育・意識改革に無関心になるため意識低下が目立つ中で、従業員500人程の中堅企業A社ではトップのITに対する理解が幸いして、システム稼働後もユーザーの教育プランを継続できた。
さらに、トップは会議で使用する資料はコンピュータ出力データ以外絶対認めなかったし、日ごろの雑談の中でもパソコン操作を話題にしたし、方針には必ずシステム活用を盛り込んだ。手書き資料に愛着を持つ頑固な役員も、定年間近い社員も否応なしにパソコンの前に座るようになった。願わくば、こうしてITに対する積極的な取り組みの姿勢が企業のDNAとして組み込まれることである。
次に、従業員300人ほどの中堅企業B社がCRMを導入したが、月一度の受注案件フォローアップ会議に使われる資料がパソコンアウトプットの体裁を整えていたものの、実は日ごろからデータのインプットが正確に行われていないため、事務局が会議の直前に全国営業マンから電話でヒアリングして会議の資料を取り繕っていた。パソコンは単なるプリンタの役にしかすぎなかったわけである。
この場合、実態を暴くのは簡単である。幹部が会議の席上で受注案件について実状を問い詰めていくと、化けの皮は簡単にはがれる。ただし幹部に殺気を感ずるほどの姿勢が必要だ。そしてライン部門にデータインプットを正確に行わせるには、それによるメリットを与えるなどの策が必要となるが、まず化けの皮をはがすことから始めなければならない。
密かに進む二重作業が経営そのものを蝕む
システムそのものの問題として、やはり500人規模の中堅企業が生産管理システムを自社開発したが、使いものにならないため現場が密かにレガシーやローカルのシステムを使っている例がある。システムに組み込まれた生産計画シミュレーションに、現場の物の動きや実務が日単位はおろか、週単位でさえついていけない状況だった。
現場の担当者は、密かに手作業や自分のパソコンを使って生産計画のやりくりをせざるを得なかった。二重に経費が使われる無駄が横行していた。この場合、本来システムが使われずにローカルシステムが横行していることが表面に出てこない。経営者や幹部は、現場に降りなければその実態はつかめない。実態をつかんだら、思い切って本来のシステムに手を入れなければ救いはない。金と時間がかかるが、無駄な出費を延々と続けるよりはましであろう。
システム導入後の間違った経営から脱却するには、経営者、幹部の積極的にして現場に根付いた努力が求められる。
本稿を総論として、次回から数回に分けて各論を論じて行きたい。
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