CGMをビジネスに活用するポイント:コンテンツをベースにする日本型Web2.0 第2回:
特徴のある日本型Web2.0。そこに生まれたブログやSNSなどの多様なCGMを、ビジネスに活用するためにはどうすればいいのだろうか――。
「日本型Web2.0」の特徴
ミクシィは7月、SNS会員が500万人を突破したことを発表した。ヤフーなど大手各社はSNSの強化に本腰を入れている。そして、さまざまな企業が自社の顧客を囲い込む手段としてSNSの運営や活用に取り組み始めている。
全日本空輸の「ANAフレンドパーク」やヤマハの「プレイヤーズ王国」のような歴史や規模の点でそれなりの成功を収めているところに加え、受験指導のZ会の「パルティオゼット」ように受験生とその保護者を対象としたもの、PR会社ビルコムの「ビルコレ」のようなECに特化した形態のものが出現している。
ネット証券最大手のイー・トレード証券を擁するSBIホールディングスでも「ネット企業としての原点に回帰して、ネット販売力と集客力強化の仕掛けを構築する」という考えの下、各金融サービスの会員顧客を対象としたSNSやイントラネットでのSNS導入を積極的に進める方針を打ち出している。
こうした、いわば「コンテンツ」をベースにしたWeb2.0の流れは、マッシュアップ(※)やオープンソースなど「ソフトウェア」の視点から捉えた本来のものとはやや異なるかもしれない。とはいえ、当事者達がそう標ぼうしているかは別にして、そのような取り組みを「Web2.0型ビジネス」というのは、決して間違った捉え方ではない。ある意味、「日本型Web2.0」の特徴だと思う。
さらに増える情報ニーズ
インターネット普及期より、日本は「個人ホームページ大国」といわれてきた。ブログ以前からウェブ日記という文化はあったし、「2ちゃんねる」のように世界に類を見ない大規模な総合掲示板もある。携帯電話によるインターネットが諸外国とは異なる形で発展を遂げてきたのも、決してそのことと無関係ではないだろう。
それはブログやSNSの時代になって、さらに大きく発展しているように思う。個人的見解では、ネットを介した情報交換が日常のコミュニケーションの基本として組み入れられている携帯電話世代が社会人となり、PCプラットフォームを利用し始めたことも、今日の状況を導いた大きな一因と考えている。
では、こうしたCGMのビジネス活用を考えていく上で、これからどのようなことが重要になってくるのだろうか。いろいろなことが考えられるが、一つ挙げておくなら、情報の信頼性や信ぴょう性に対する人々の関心がさらに強くなることがある。それは、さらなる情報ニーズを生み出すことになるはずだ。
ブログやSNSをマーケティングチャネルと捉えることは構わないが、囲い込んだ顧客自身の情報チャネルが決してそこに一元化されるわけではない。生活者によってもたらされた個々の情報は表現などの面で情報としての魅力が高まったり損なわれたりするだろうが、得られる情報が増えれば増えるほど、人は何らかの意思決定に際して多くの情報を求めることになるはずだ。
Aという情報に触れたとき、そこから商品の購入などに結び付く可能性はもちろんある。今後はそれとともに、Aそのものを確認(ベリファイ)するフェーズが重要になってくる。それは、Aと同じ内容の別の情報Bを探すことかもしれないし、Aの発信者が自分のよく知っているほかの商品についてもCやDなどの情報を発信していないかを確認することかもしれない。ECサイトなどで商品レビューが何件も並んでいるのをよく見かけるが、その並べ方を単純に書かれた日付順にするか、それとも内容に応じて工夫するかといった違いで、得られる効果は異なるだろう。
CGMの時代に入り、マーケティングがますます複雑化することだけは間違いなさそうだ(「月刊アイティセレクト」掲載中の好評連載「新世紀情報社会の春秋 第七回」より。ウェブ用に再編集した)。
※ APIなどが公開されているサービスや技術を複数組み合わせて、1つの新しいサービスをつくること。日本でもヤフーやNTTレゾナント(goo)などがAPIの公開を始めている。
なりかわ・やすのり
1964年和歌山県生まれ。88年NEC入社。経営企画部門を中心にさまざまな業務に従事し、2004年より現職。デバイスからソフトウェア、サービスに至る幅広いIT市場動向の分析を手掛けている。趣味は音楽、インターネット、散歩。
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