「Yahoo! ケータイ」誕生に慌てたか――グーグル、au、ドコモ:ケータイルネサンスは起こるか 第2回(2/2 ページ)
ボーダフォンにおける「Yahoo! ケータイ」の誕生は、PCインターネットのポータルの競合らを「ケータイキャリア三国志」の戦いへ駆り立てることになった。当然、彼らがタッグを組むのは、KDDI(au)やNTTドコモである――。
ドコモも動いた
そんな2社の動きを、NTTドコモは指をくわえて見ているわけではない。「EZWeb」にグーグルの窓が現れる2日前、10月から「iモード」で検索サービスを始めることを発表したのだ。
ただ、ドコモの場合は、その仕組みがやや複雑だ。「iモード」のトップ画面である「iメニュー」内ではなく、そこから「メニューリスト」に入ったところに検索窓が置かれる。検索結果は「iメニュー」内にある公式サイトのみのリストアップとなるが、その検索結果の下部に設けられた別枠内に提携する検索サイトがリストアップされ、その中から選んだ検索サイトを使って、メニューリスト内で入力した同じキーワードによる、一般サイトを含めた検索(「引き継ぎ検索」などと呼んでいる)ができるようになるという。つまり、auやボーダフォンのように一検索サイトに独占的なポジションを与えるものではないのだ。提携サイトは、NTTレゾナント(モバイルgoo)や楽天(Infoseekモバイル)など9社(※1)に及んでいる。
こうした動きはここ2、3カ月の間で突然起きたといってよい。その原因は、携帯電話番号ポータビリティ(MNP、※2)開始を踏まえたものというより、明らかに「Yahoo! ケータイ」の誕生にある。
「実際、ソフトバンクのボーダフォン買収があって、急にKDDIがグーグルと、NTTドコモがいろいろなポータルと提携した。こんなことは、1年前だったらあり得ない。当然、(ソフトバンクのボーダフォン買収が)きっかけになっている」(大手ポータルのモバイル担当者K氏)
このように、ヤフーが「キャリアのポータルサイト」として出現したことにより、キャリア各社は一斉に検索サービスの導入・強化を始めた。これまで続いていた、「キャリアによるポータルサイト」の独占的な存在と、公式サイトだけがそれに頼ることができた構造は、キャリア主導により閉じられたものだった。検索サイトのケータイ進出で、そのクローズドな世界が一挙にオープン化し始めているのである。
「最近でこそ、キャリアは検索サービスを入れてオープンだといっているが、それまではメニューから公式サイトだけしかアクセスできない、クローズドなサービスをしていた。ただ、ケータイでもインターネット化が進み、検索機能に対するニーズがだいぶ出てきている。そうなってくると、PCのサイトをケータイで見たいというニーズが生まれてくるのは考えられることだ」(K氏)(発売中の「月刊アイティセレクト」10月号第1特集「ケータイビジネスの地殻変動を追う! ケータイルネサンスは起こるか」より)
※1 その後、1社が追加され、提携サイトは10社になった。
※2 現在使用しているキャリアから別のキャリアに契約を変更しても、電話番号が変わらない制度。メールアドレスや料金プランなどは新規契約先のものに準ずることになる。
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