「SOAはもうビジョンという段階ではない」とSAPのスナーベGM
「エンタープライズSOAを今から始めるべきだ」――「SAP TechEd '06」で、SAP AGインダストリー・ソリューション GMのスナーベ氏は、企業がSOAに取り組む必要性を説いた。
SAPジャパンは、10月5日から「SAP TechEd '06」を開催した。クロージングの基調講演で、SAP AGインダストリー・ソリューション ゼネラルマネジャーのジム・スナーベ氏は、サービス指向のSOAがエンタープライズITの将来の流れだと強調。企業が今SOAに取り組む必要性を説いた。
SOAは、ビジネスの処理単位をサービスとして構成し、これを組み合わせてシステムを構築するアーキテクチャー。SOAでシステムを構成すると、サービスを新たに組み込んだり、外したりと柔軟なシステムを構築できるとされる。
スナーベ氏は「SOAはビジネスサイドがもたらしたもの。製品を取り巻くビジネスモデルが変わり、ビジネスプロセスが変わったからだ」と話す。
現在では、かつての製品中心のビジネスモデルは、顧客に付加価値を提供するモデルへと変化を迫られ、開発、製造、販売などのバリューチェーンにおいても、得意な企業が担当する方向へシフト。バリューチェーンの「見える化」やプロセスの緊密な連携が課題となってきた。これを支えるITも柔軟なアーキテクチャーでなければ対応できない、というわけだ。
SOAはビジネスとしてとらえる
SAPは、1992年にクライアント/サーバ型の「SAP R/3」を出荷しリーダーの立場を築いてきた。しかし、このような企業のビジネス環境の変化に対応するため、2003年にはエンタープライズSOAを提唱。「SAP NetWeaver」をビジネスプロセスプラットフォームとして、その上でSOAを可能にするアーキテクチャー変更を行ったという。「これは新しい概念ではないのだが、抽象化してサービスを使いやすくしている」(スナーベ氏)。
SAPユーザーのスイスの計測器メーカーEndress+Hauserは、SOAへの取り組みをビジネス変革のチャンスととらえて取り組んだ結果、デザインから、メンテナンス、買い換えまでのプロセスを向上させることができたという。「SOAはITでなく、ビジネスニーズからとらえるところにチャンスがある」とスナーベ氏。
ゲストとして登場したAccarda AGのローレンス・リードCIOは、「ITを展開しているのではなく、ビジネスを展開しているという考え方が必要」と話した。CIOの役割も、ITを中心としたものから、ビジネス中心に切り換わって考える時代になっているとした。
「実はわたしはSAPの中身のことはよく知らないが、価値を提供してくれることをよく理解している。CEOはビジネスを変えろとは言うが、ITを変えろとは言わない」(リード氏)。
単なるビジョンではないSOA
SOAは既に単なるビジョンという段階ではなく「いかに活用できるか、という段階にきている」とも言う。
スナーベ氏は「かなり複雑なインフラの話をしているのは確かだが、今後はもっとシンプルになっていく。もうパワーポイントに書かれただけのビジョンという段階は終わった。SOAがいかにビジネスを変えるか、SOAを始めるときがきている」と強調した。
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