政府の導入期限が機に――普及拡大を期待するスマートカード(2/2 ページ)
スマートカードには、今後10年で1億枚IDにも達する予想がある。10月27日の期限を機に、米国政府外でも普及が進む動きが目立ってきた。
カリフォルニア州フリーモントに本社を置くActivIdentityでは、連邦政府および地方政府が発行するスマートカード(運転免許証用など)を含めると、向こう10年間で5000万〜1億枚のスマートカードが米国市民の手に渡ると予測している。
企業がスマートカードの新たな利用法を見つけるのに伴い、いつか将来、許容される支払い手段としてスマートカードが従来のクレジットカードやデビットカードに取って代わる可能性もある、と同社は主張する。
バージニア州ハーンドンに本社を構えるスマートカードソフトウェアとコンサルティングサービスのプロバイダー、CyberTrustで基盤インフラを担当するトム・グレコ副社長によると、民間部門でのスマートカード革命は一夜にして成就しないかもしれないという。
それでもグレコ氏は、HSPD-12の期限は、スマートカード普及に向けた全般的な動きの中での重要なマイルストーンになると考えている。
「向こう数年間で、既存のカード保有者コミュニティーから自然な進化が起きるだろう。そこで電子的証明の有効性が実証されれば、価格と利用分野の両面で非常に面白い状況になり、民間企業の間での普及に拍車がかかるだろう」とグレコ氏は話す。
「コンシューマーがスマートカードを手にするようになるのは、さらに5年ないし10年先になるかもしれないが、企業は政府の下請業者などが優れた社内活用法を発見するのを見て、スマートカードの有効性を理解するだろう」(同氏)
グレコ氏は一例として、スマートカードは機密文書へのアクセスを許可/禁止する手段として利用できると指摘する。これは、企業がコンプライアンス(法令順守)要件を満たしたり、社内のデータ漏えいを防止したりするのに役立つという。
同氏によると、企業各社は社内ネットワークのセキュリティと物理的なセキュリティ対策を統合する作業を始めたばかりだが、スマートカードは異種システム間での認証を行うための強力なツールとしての役割を果たせるという。
コンシューマー向けの新しい応用分野として、同氏はベルギーでのスマートカードの利用法を強調する。ベルギーでは政府のプログラムを通じてスマートカードを配布した結果、オンライン上の異常者から未成年者を保護する目的で、インターネット上のチャットルームにアクセスする際の認証手段としてスマートカードが利用されるようになったという。
HSPDやReal ID Actなどの指針は、今後数年間でスマートカードがより多くの米国人の手に渡るのを促進すると考えるアナリストもいる。Real ID Actは、2005年に議会で可決された法案で、高度な認証機能を備えた新しい運転免許証をデザインするよう各州に義務付けたもの。
コネティカット州スタンフォードにあるGartnerのアナリスト、グレッグ・クレイズマン氏は、「向こう数年間は、政府プログラム以外で見られる動きは少ないかもしれないが、多数の政府職員がスマートカードを取得する一方で、人々が免許証という形でスマートカードを手に入れるのに伴い、スマートカードの採用に意欲的になる民間企業が増えてくるのは間違いない」と話す。
「5年後にスマートカードが米国人全員に行き渡るとは思わないが、HSPDなどの指針は、業界が大きな一歩を踏み出すのを後押しするものであることは確かだ」(同氏)
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