大人ならスルー? スラッシュドット・ジャパンの秘密(2/2 ページ)
スラッシュドット・ジャパンのサイトデザインが、同サイトの運営開始以来はじめて全面的に変更された。同サイトの今後、そして、最近の記事動向について、先日見事に2006年度日本OSSフリーライダー賞を受賞した佐渡氏に聞いた
/.Jerならこれは見ておけ、というストーリー
ITmedia ところで、ここ最近盛り上がった話題なり面白かった話題なりを幾つか挙げてほしいのですが。
佐渡 難しいですね。人によって基準も違いますし、ページビューやコメントが多い記事が面白いというわけでもないですし。
普通のIT系メディアでは取り上げないような記事から、個人的に面白かったものを選ぶと、最近なら「スルー力」ですね。(ITエンジニアにはスルー力が足りません)
高林哲氏が、「スルー力」に関するITエンジニアのためのカンファレンス開催を自身のblogで発表した件の記事なのですが、そのblogエントリそのもので「スルー力」が試されてるというのに、わざわざストーリーにして食いついてしまう投稿者、編集者、ユーザーのそれぞれの空気がしみじみ面白いと思いました。まあ、スラッシュドットはスルーできない人のためのメディアなのかもしれません。スルーできないからタレコむという人もいるでしょうし。
後は、数は多くないですが、転職ネタですね。Linuxカーネルメンテナーのアンドリュー・モートン氏がGoogleへ移籍したストーリーについては、それ自体もLinux業界のパワーバランスにかかわる話でもあるので驚きましたが、ついでにDebian開発者である鵜飼文敏氏のGoogle移籍まで公にされていて、これも自分としてはしみじみ面白かったですね。鵜飼氏に関しては、その前のストーリーでマウンテンビューに移住したと書かれてしまってたのを、こちらの補足説明で明確な否定がなされてなかったので、迷惑をかけてしまいましたが、まわりでは何故か異和感なく移住と受け入れられていたのも今思うとつい笑ってしまいます。身近な人々が自分が運営するサイトで自分が知らないうちにニュースになってしまうというのは、何とも言えない面白さがありますね。わたし自身もたまにニュースになっていますけど。
身近な人々といえば、春先にはMicrosoftのCEOがCNN「重要でない10人」に選出というストーリーもありましたが、スティーブ・バルマー氏、久夛良木健氏、ジョナサン・シュワルツ氏、リーナス・トーバルズ氏といった大物に加え、Slashdot.orgの編集リーダーであるCmdrTaco(編注:ロブ・マルダ氏)まで重要でない10人に選出されていたのも興味深かったです。いままでそんなに影響力があると思われたのかと、彼をよく知ってる身からするとこれもニヤッと笑ってしまいます。
ITmediaがネタ元となっている「ソニータイマーなど埋め込まれている訳がない」と、VAIO関係者が発言というストーリーもなかなか興味深い出来事でした。これはこのままだと今年一番のアクセスがあったストーリーになりそうなのですが、ソニータイマーという言葉をソニー関係者が公式の場で使ってしまうというのは、やはりニヤッと笑ってしまいますよね。思わず言ってしまったのか、あえて過去の都市伝説であると打ち消すために言ったのか、よく分かりませんが、わたしとしてはネタとして笑い飛ばすぐらいがソニーのマーケティング的にも良いのではないかと思います。
最後にもう1つ、つい先週の話でしかも私事でもありますが、2006年度日本OSSフリーライダー賞にて、フリーライダー賞貢献者賞という賞を頂いてしまいました。
ストーリーのコメントは見たところ否定的な反応もそれなりに多いようですが、個人的には非常にうれしいですよ。何せイケメンと評価されたようですので(笑)
フリーライダーの語感的にはあまり良くないイメージもありますが、オープンソースの世界に関しては、使ってもらって裾野が広がることは開発者にとって悪いことというわけでもありません。
わたしは立場上、オープンソースについて話をする機会がそれなりにあるわけですが、そこでオープンソースの世界が成り立つ仕組みを説明する際などにおいて、「貢献」という言葉は便利なのでつい安易に使ってしまうわけですが、そのうちに自分でも息苦しくなってしまうことが多々あります。
「やはり貢献はしないといけませんよね」という言葉を馬力のありそうな若者に言われると、ちょっと堅いなーと思いつつもガンガンとつっ走ってくれるかなと今後を期待してしまうわけですが、例えば同じ言葉をこれからビジネスを開始しようとする企業関係者に言われると、まるで重い年貢を取り立てているような気分になる場合もあります。このような息苦しさを感じる時に、お気楽にフリーライドでいいじゃんと一言で済ませられるのは結構ありがたいわけで、OSSFJの中の人たちにはいい時期にネタを放出して頂いたと思ってます。
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