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コラム

ロジックだけでは勝てない「抵抗勢力」との戦い企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第15回(2/2 ページ)

新しいことに挑戦するときは必ず「抵抗勢力」が台頭するが、対応の仕方いかんで経営に大きな間違いをきたす。彼らをその原因から「守旧派」「ITアレルギー派」「メンツ派」「システムオリエンテッド派」に分類できるが、いずれにせよ、恐れず、しかし慎重に戦うことが大切だ。

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新しい時代の到来をアピールする

 またF社では、新任CIOのH取締役が中心になって導入推進するCSS(クライアント・サーバー・システム)に対して反感を持ち、邪魔をする前CIOのG取締役に、H始め情報部門やユーザー部門のメンバーは手を焼いた。特に従来Gの部下だったI情報部門長は、たびたびGの部屋に呼びつけられ、けん制を受けるのが苦痛だった。彼らは、Hを中心に結束した。古手のGが社内では隠然たる力を誇示しているが、CSSに関しては自分たちがメジャーな勢力であり、Gはマイナーである、しかもGの発想が卑屈であることを確認しあって、毅然とした姿勢でGに対峙することにした。Gのけん制を無視することにしたのである。HはIに対して、Gに呼ばれても応じないように指示した。Gの報復を極端に恐れるIに対してHは口にしたくないことを敢えて言って鼓舞した。「これから当社では、Gの時代は終わる」と。そのうち、無視されたGは大人しくなっていった。

 これも、悪質な抵抗勢力は切り捨てること、しかも公式の職制で切り捨てるのではなく、非公式に日常業務の中で実務者達が見捨てることも、有効であるという好例である。

トップが動き素早い決断を下す

 以上の例で見たように、悪質な抵抗勢力にはオーソドックスな手法は有効でない。

 目的を明確にし、価値観を全社で共有することによって抵抗勢力を納得させるというオーソドックスな手法は、抵抗勢力の中でも多数派を占めるなんとなく抵抗しているという「なんとなく派」には有効かも知れない。創造的破壊を求められるIT導入に意固地な信念を持って抵抗する勢力には、「トップが動く」「切り捨てる」という強硬手段で行くしかない。

 あるいはここでは触れなかったが、システムオリエンテッド派にはシステムそのものの見直しが有効だし、そのほかに外圧の利用や、ITを使わないと仕事ができないように業務ルールを仕組むなどの方法はある。しかし、悪質な抵抗勢力に使うエネルギーがあるなら、多数派の「なんとなく派」を説得する方に使うのが、企業のためである。

 しかも悪質な抵抗勢力は、騒ぎ立てるほどの数は力もなく、恐れるに足りないということを認識しておくべきである。虚に吠えてはならない。

 一方、現場の片隅でけな気にも、新しいことに勇敢に立ち向かおうとしている人々の努力を、トップも幹部も見落としてはならない。彼らを見守り、必要とあらば手を貸すべきである。A社やF社の例にも見られたように、彼らが結束するとすばらしい力を発揮する。

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