「従業員と顧客」の満足度におけるリンケージとは?:企業にはびこる「間違いだらけのIT経営」:第17回(2/2 ページ)
従業員の満足と顧客の満足はどちらか一方だけが飛躍することはない。必ず相互に影響しあう。従業員の満足が、うまく顧客サービスへとつながるようにITを利用すべきだ。
心の問題だけではないCSの十分条件とは
ここでもう一度、ESと業績・CSとの関係に思いを馳せてもらいたい。
ESの業績に与える影響は、確かに少なくない。しかし、相手は「業績」である。その背景には人間模様も絡んでくるが、それがすべてではない。一方ESがCSに与える影響を考えたとき、相手は「人間」(Customer)である。当方も「人間」(Employee)である。そこで人間の心のあり方が基本になる。CRMやカスタマーセンターなどを導入し、顧客情報を収集して一元管理をし、きめ細かな顧客対応が可能になったからCSは磐石であるという考えが、それだけでは成り立たない理由が、ここにある。
もちろんその逆も言える。すなわちCS向上には、人間の心だけでは不十分である。両者の関係について言えることは、人間の心を必要条件とすれば、十分条件として仕事の仕組みや体制が求められる。ここにITの出番がある。次にその十分条件について考えてみよう。
ESに対する配慮が行き届き、従業員が誇りと満足感を持って、心置きなく顧客に顔を向けてCSに専念できる状況になっても、CS遂行の手段が整っていなければ動きが取れない。例えばESに満足した従業員が顧客に顔を向けたとき、顧客状況の把握がばらばらだったり、製品の品質・納期・価格がいい加減だったり、顧客からのクレーム対応がたらい回しだったり、あるいはアフターサービスがいい加減だったりしたら、CSを満たすことはできない。
ESの十分条件は、組織的に顧客状況を把握し顧客の要望や意見を吸い上げる体制であり、市場指向の製品を開発する設計の体制であり、所定の品質や納期を守りながら適切な価格で製品を供給する製造体制であり、市場クレームへの適切な対応が可能な体制であり、さらに迅速にして確実なアフターサービスと欠品のないサービス部品の供給体制などである。
それらを実現するために、ERP、SCM、CRM、SFAなどがあり、グループウェア、コールセンターなどの利用が期待されるのである。
CSの前にESを唱えなければならない。そしてCSのための十分条件を整えなければならないが、CSのためにまずITありき・・・では決してない。
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