有能な議長とITが「うんざり会議」を変える:企業にはびこる間違いだらけのIT経営:第19回(2/2 ページ)
「会議は踊る、されど進まず…」のウイーン会議のごとく、現代の企業人たちも数多い会議と非効率な会議にいかにうんざりしているか。そこで会議時間を半減する方法の検討、それがとりもなおさず会議をより効率化するIT利用の会議についての考察へと議論を発展させていこう。
ITによる会議改革性能が向上し格段の進歩
ITを会議に利用する場合、その目的・用途・運用の仕方いかんでは、毒にも薬にもなり得る。いくつかの代表例を挙げて、検討しよう。まず電話会議。初期投資が不要で費用もサービス料1分25円位、後は通信料である。携帯電話からも使えるという手軽さから、中堅企業A社で導入した。しかし発言が重なる、司会者が不慣れだと要領を得ない、資料も見られないということなどから、A社では今やほとんど使われていない。多くを期待し過ぎないで、割り切って用途を限定すれば使えるだろう。
グループウェアによる会議もある。費用は、あるベンダー製品のASP版で基本料金が年4万円弱(他社の例で10人用基本セット買取でおよそ8万円弱)とそれほど高くない。時空を問わず利用でき、入力内容が蓄積され、会議名・タイトル・発言内容などから検索できる。グループウェア自体はここのところ進化しているが、実用上はリアルタイムの会議には不向きで、小企業B社では試行錯誤の結果、諸連絡・会議資料事前配布など緊急性を問わない用途に使っている。廃止すべき会議の代替策として、有力候補である。
ウェブ会議システムは、パソコンとIPネットワークを利用する。価格は、一般的な例でソフトと周辺機器で600万円弱である。ワード、エクセル、CADなどのアプリケーションを参加者で共有できるし、自席のパソコンからしかも時空を超えて参加できるのが良い。一方、機能が多いだけ複雑で、画像・音声の質がネットワークの状態に左右され、そしてサーバメンテナンスが必要になる。
TV会議システムは、ISDN・光などの回線を利用してTVやプロジェクターに専用端末を接続して利用する。メンテナンスが簡単で、音声と映像の品質がよいので用途が医療・教育など広い分野で期待される。一方、機能が音声・映像に限られ、専用会議室が必要で、MCU(多地点会議装置)など高価な装置を必要とする点が致命傷と言われてきた。しかしオプションとしてパソコンと接続をしてデータ共有ができるし、可動式簡易システムも採用できる。
アイティセレクト06年7月号で紹介されている日立電子サービスでは、毎朝の全国主要拠点との簡単な連絡会議を、職場の一角にある小型TVで手軽に開催している。
システム拡充の投資1億円は、約4カ月の出張経費で回収できるらしいが(新設10拠点で、基本的標準価格3千万円弱)、それより情報伝達と経営のスピードアップの効果の方が大きいと、日立電子サービスの役員は言い切る。実は筆者は20年ほど前、中国出張報告を地方から東京へTV会議で行ったことがある。社内で注目されたが、機能や使い方に問題があったのか、意見交換もなく、機械的であるため、TV会議に対する社内の関心は薄れていった。その10年後も、TV会議に対する認識に変化はなかった。今はカメラ・マイクなどのハードや、機能・操作性など格段の進歩を遂げ、臨場感や迫力は他のシステムとは比較にならないほど増している。
うんざり会議撲滅へITの積極導入を
さあ、「うんざり会議」という間違った経営から脱出するために、すぐ行動を起こそう。
その次に、間違いなく会議の効率向上・経営のスピードアップに貢献するIT利用の会議に取り組もう。ただし会議の目的を明確にし、どのIT会議を利用するのが最適かをよく検討し、使い方を充分わきまえた上で導入しなければならない。
IT会議は、確かにFace to Faceに敵わない面はある。微妙な意見や裏の意見、心の通い合い、あるいはブレーンストーミング的な意見交換、会議後の飲み会などの点で不十分なところはある。しかし導入前に、細部についてあれこれ言っていても始まらない。それはそれで、別の解決方法がいくらでもある。IT会議導入を逡巡する理由にはならない。
ただし、IT会議導入前に「会議そのものの改革」を徹底して行うことが、導入の必須要件である。
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