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眠れない端末? “くせ者”パワーセーブモードを使いこなす無線LAN“再構築”プラン(2/3 ページ)

携帯型の無線IP電話は携帯電話と同じく、いかにバッテリーを持続させるかが課題だ。そのため、端末にはパワーセーブモードなる機能が用意されているが、利用環境をうまく調整しないとなかなか「仮眠」できないという事情がある。

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パワーセーブの調整はほどほどに

 パワーセーブモードは、IEEE 802.11にも規定された機能であるが、これまでその実装の必要性が低かったため、各社の独自性が強く出てしまっているのが現状だ。しかしながら、これがDTIMに起因することは確かなので、その調整方法の一例として、日立電線の無線IP電話「WIP-5000」とシスコシステムズのAP「Cisco Aironet 1230」の組み合わせを紹介したい。

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日立電線のWIP-5000
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シスコシステムズのAironet 1230シリーズ

 まずCisco Aironet 1230について、DTIM送信間隔の調整は「Beacon Period」と「Data Beacon Rate」の2つの項目にて行う。次がそのデフォルト値となっている。

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 このKusec(キロマイクロ秒)を見て、複雑な単位(素直にミリ秒とすればよい)と思うかもしれないが、K(キロ)は、この業界では1000ではなく1024で計算するため、このような単位を用いるようだ(ただし、ほとんど誤差の範囲であるため、以下の単位はmsecで置き換えて考えても構わない)。

 そして100Kusec間隔で送信されるビーコンに対し、Data Beacon Rateを2と設定すると、2回に1回、つまり200Kusec(1秒間に約5回)間隔でDTIMを送信するということになる。

 一方のWIP-5000では、パワーセーブモードとして次のような設定項目(デフォルト値)が用意されている。

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 一見、Default Listen Intervalという値がDTIMを無視する間隔のように見えるが、これはAPへのAssociation Request送信時のListen Intervalフィールドに載せるだけの値であり、実際にはDTIMに100%応じる。このようになっているため、双方デフォルトのままでは1秒間に5回もたたき起こされることになり、Use Power SaveをONにしてもパワーセーブモードはまったく機能しないことになってしまう。したがって、AP側の設定を次のように変えておく。

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 このように設定することで、通常のビーコン周期は1秒間に2回、DTIMは30秒に1回しか送出されないようになり、端末はしばらく仮眠につくことができる。

 なお、30秒に1回としたのは、AP側のActivity Time Out値が60秒に設定されているためで、1回ロストしただけでAPから見てディスアソシエート(切り離された)状態にならないようにしたものである。もしこのようになってしまうと、端末が圏内かつ電源が入っている状態であるにもかかわらず、その端末を呼び出せないという状況になるためである。

 もちろん、Activity Time Outは、Cisco IOS 12.3.x以降からその設定を変更できるようになっており、これを引き延ばせばさらにDTIM送信間隔を延ばすことも可能だろう。しかしこの値を引き延ばしすぎると、実際に電源OFFの端末や圏外に出てしまった端末をいつまでもエイジングできないことになるため、人の出入りの激しい場所では別の問題を生むかもしれない。

 また、先の端末設定に関する記事の中でも少し触れたが、N900iLではDTIMが5秒以上得られないと圏外とみなす実装になっているため、少なくともパワーセーブ機能を有効にするという要件がある場合には、WIP-5000との共存は事実上不可能である。

 さらに、通常のビーコンについても、その受信には多少電力が消費されてしまうため、この時間も延ばすことでさらに電力消費を抑えることができるかもしれない。しかしながら、この通常ビーコンの受信は、端末にとって自らが圏内にいることを知るためのものでもあるため、不用意に引き延ばしすぎると端末側に「圏外」と表示されることにもなりかねない。

 特にN900iLの場合、ビーコンに同期してRTPをジッタバッファから押し出す実装になっているため、ビーコン間隔を広げた場合は、それに合わせてジッタバッファも広げる必要がある。ジッタバッファは最小20msec〜最大240msecの範囲となっており、必然的に240msecよりも大きくはビーコン間隔を空けられない。また、240msecであってもその遅延は大きい。すぐ傍らで肉声が聞こえるような状況で端末を通して会話してみると分かるが、かなり違和感を覚える。

 したがって、「調整はほどほどに」ということで取り組んでほしい。

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