仮想化を躊躇する企業に明日はない:「行く年来る年2006」ITmediaエンタープライズ版(2/2 ページ)
メインフレーム時代からあった技術だが、2006年ほど「仮想化技術」が脚光を浴びた年はなかった。ハードウェアとソフトウェアの緊密な結びつきを解き放ち、システムに柔軟さをもたらす「仮想化」、そして「アプリケーションの仮想化」ともいえる「SOA」は次のフロンティアだ。
水平分業が進むオープンシステムにおいては、ハードウェア、特にプロセッサの進化とOSやミドルウェアのバージョンアップが同期することは稀だ。しかし、仮想化技術を利用して、ハードウェアとソフトウェアの結びつきを緩やかにしてやれば、ハードウェアだけを最新の製品にリプレースし、その恩恵をすぐに享受できる。ハードウェアの性能向上によってキャパシティに余裕が生まれ、OSやバージョンが異なる複数台のシステムもそのまま1台に統合することができるからだ。
「SOA」でアプリケーションも仮想化
BEA Systemsの創業者兼CEO、アルフレッド・チュアング氏は12月、冬の北京で開催した年次ユーザーカンファレンスで、ビジネスの最適化や変革を可能にする「SOA」(サービス指向アーキテクチャー)を自らのルーツでもある中国の顧客らに売り込んだ。
「SOAの本質は、伝統的なソフトウェアでは密接に結びついていた“機能”と“プロセス”を切り離すという、システム構築のアプローチだ。こうすることで、機能は機能で改良・強化でき、機能を呼び出すプロセスもビジネスの変化に応じて柔軟に組み替えることができる」とチュアング氏。
アプリケーションを「機能」と「プロセス」に切り離して仮想化することによって、それぞれ別個に管理してやればいいのだ。「仮想化」と言ってしまうとなかなか見えにくいが、それによって企業が享受できる恩恵は計り知れないものがある。
北京のカンファレンスにキーノートスピーカーとして招かれたVerizon WirelessのCIO(米国西部地域担当)、カール・エベリン氏は、「SOAは3〜4カ月も取り組めば、その効果は分かるはずだ」と、事も無げに話す。彼は、同社が顧客とのコンタクトポイントとして重視する「Verizonwireless.com」も統括する。顧客サービスの質を高めるべく、同社では週当たり数本のアプリケーションをリリースするという。
「われわれにとってSOAは、単に必要だというのではなく、クリティカルなのだ」とエベリン氏は言い切った。米国の調査では4割が「SOAのコンセプトが完全には分かっていない」と回答しているし、日本の企業の多くも、「SOAはまだまだ」と考えているようだが、そんな声をあざ笑うかのようだ。
SOAは確実に到来する潮流
「われわれを取り巻く環境の変化は激しい。しかし、それに追従するのがIT部門に課せられた使命。インフラストラクチャーはオープンスタンダードを採用して仮想化技術を活用し、アプリケーションはSOAによる構築アプローチを進めている」
こう話すのは、ベンチャー企業やドットコム企業の技術者ではない。年間2000億円をITに投じ、IT部門の技術者も1万人に上るという三菱東京UFJ銀行の執行役員、根本武彦システム部長だ。
三菱UFJフィナンシャルグループの中核である同行は金融業界の再編によって生まれたメガバンクだ。根本氏は、傘下の約5000人をシステム統合に割きつつ、半期で1000を超えるプロジェクトを進める立場にある。11月中旬に都内のホテルで会ったときにも、時計の針はとうに夜の9時を回っていたが、幾度も携帯電話が鳴る。過去にない大規模なプロジェクトを近く始動させるのだという。
「SOAによるアプリケーションの仮想化は確実に到来する潮流。ならばわれわれは他に先駆け、半歩でも先んじなければならない」と根本氏は話した。
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