IT技術者不足と“薄利多忙”を解決できるか――LLPが仕掛けるM&A(2/2 ページ)
IT需要が好調の中、大手が最も頭を悩ませているのは技術者不足だが、その一方で中小規模のIT企業は“薄利多忙”に陥っている。そんな両者の問題を解決しようとする新たな支援事業を始めたLLP(有限責任事業組合)がある。岐路に立つIT業界に投じられた一石がどんな波紋を呼ぶか――。
ではなぜハーネスLLPがそうした小規模な企業もM&Aの対象にできるかというと、そこがLLPという事業体にした所以だ。「株式会社だとどうしても利益追求が第一義になってしまいます。私たちが目的としている中小企業のネクストステージを支援する活動のためにはLLPが最適だと考えました」(松倉理事長)
一方、これまでは中小企業の側にも、自社がM&Aの対象になるような存在ではないとの見方が定着していたようだ。中小企業庁がまとめた「中小企業白書2006年版」によると、中小企業は事業売却よりも廃業を選ぶケースが多く、その理由として「事業売却が自社に可能だと思えない」という企業が半数近くを占めた。つまり、これまで中小企業にとっては、M&Aの対象になることなど想定外だったわけである。
しかし、中小企業でも独自のノウハウやスキルを持つ人材を抱えたところは少なくない。それどころか、多くのシステム開発の実態は中小企業が支えてきたと言っていい。その意味では、ハーネスLLPの活動は中小企業が培ってきた技術力の再生といえる。
プロワーカーたちが投じた一石の波紋やいかに…
とはいえ、大手企業にとっても中小企業にとってもお互いにメリットの大きいM&Aを実現させるには、仲介する立場としてそれぞれの経営や事業内容に対する相当の“目利き”が必要だ。その点、ハーネスLLPにはIT業界のさまざまな業務で20年以上のキャリアを持つプロワーカー(独立事業主:インディペンデント・コントラクター)が名を連ねており、M&Aのみならず、経営戦略、営業戦略、ファイナンス、人事関係など幅広いニーズに対応したプロフェッショナルサービスを用意している。LLPというと、日本では複数の企業が特定の事業を行うために出資して設けるケースが大半だが、インディペンデント・コントラクターが集まって立ち上げたのも時代を先取りした格好だ。
松倉理事長が取材の最後にこう強調した。
「多段階下請け構造、技術者不足、後継者問題、オフショアリング…と、IT業界は対処すべき問題が山積しています。そうした状況を改善・改革してさらなる発展をめざすためにも、ここ2、3年で抜本的な業界再編を行う必要があると、私たちはみています。私たちの活動がそのきっかけの一つになれば嬉しいですね」
同LLPが投じた一石が、岐路に立つIT業界にどんな波紋を呼ぶか、注目したい。
(「月刊アイティセレクト」2007年2月号のトレンドフォーカス「中小IT企業のM&A支援を行う LLPの活動にみるIT業界の岐路」より)
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