辞めた人を想うより、いま辞めようとしている人へ:“若葉マーク”社員を活性化させる「実感主義」の育成戦略(2/2 ページ)
「大学新卒者は3年で3割が辞める」という新卒離職率。若い戦力を育てることが容易ではない時代となっているようだ。若手社員が退職する理由はさまざまだが、今回は「自分の将来に漠然した不安を抱え、成長している実感がない」という理由を起点にして、成長の実感を抱かせるにはどうすればいいか、それをサポートするITの仕組みは何なのかを探ってみた。
ITによる環境づくりを考える
このように考えてくると、少なくとも、「会社はあなたのこんな成長した姿を見たい」というメッセージは投げかける必要はあるのではないだろうか。「そんなことは自分で考えろ、仕事の中から見つけろ」というのも正論だ。しかし、社内にいる「退社予備軍」化した若手をもう一度活性化させるには、成長を実感させる工夫が欠かせないにかもしれない。そしてそれを実現しやすい環境を作ることが必要になる。ITはそうした環境づくりに役立つはずだ。
ITによる環境づくりとして具体的にはどんなことが挙げられるのか。ここでは3つほど挙げてみる。
一つには、仕事のプロセスを標準化させ、それをオープンにすることだ。「うちはOJTが基本。現場から学べ」というだけでは、仕事がうまくいく時といかない時の差が激しくなってしまい、若手社員にとっては「成長の実感」などを感じているヒマがない。
また、社内ポータルを活用し、コミュニティ作りを試みるという手もある。このコミュニティには「仕事中心型」と「自由発言型」の2種類に大別できる。「仕事中心型」はベテラン社員が若手社員の仕事上の具体的な質問に対して業務の一環として迅速に答えるようにする仕組み。毎日ベテラン社員が仕事の中で若手を教育する機会が減少している場合など効果的だ。また、「自由発言型」は匿名で発言することも許可して、自由に発言できる掲示板のようなコミュニティだ。「そんなことは自分で調べろ、考えろ」という対応ではなく、仕事上、またはそれ以外の発言を書き込ませる。ベテラン社員が見たら、「そんなことで悩むなよ」という程度に思われることでもコミュニティの中での返信に救われるケースも多いという。
最後に若手だけを通常業務から引き離し、一定期間研修するという手法。最新の技術、方法論を徹底的に教え込む。入社3年までの社員に対して現場の上司たちが知らないさまざまな手法、考え方を学ばせ、現場を変える尖兵になってもらうという方法だ。現場ではどちらかといえば単純で補助的作業が多い若手に、本来の進むべき方向性を思い出してもらうことが狙いだ。
これらの環境づくりについて、次回から詳しく解説していく。成長を実感させることのできる育成戦略は身近なところから発案されたものばかりだ。
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