MIJSが示すソリューション像、まずは現実的な製品連携から
MIJSコンソーシアムの成否の鍵を握る技術部会の梅田会長は「ただ集まって海外に行くだけではない。具体的にパッケージを連携させることを最初にやる」と力説する。
「ただ集まって海外に行くのではだめ。それだけでは、顧客のことを本当に考えていることにはならない」――。システムインテグレータ代表取締役でMIJS(Made In Japan Software)コンソーシアム技術部会長の梅田弘之氏は、プライベートカンファレンスのセッションにおいて技術部会の活動報告をこのような話から始めた。
MIJSコンソーシアムの活動は、国内のソフトウェアパッケージベンダーが集まり、一緒になって海外に進出しようという単純なものではない。まずは個々には高い評価を受けているパッケージを連携させることで、トータルで価値の高い新しいソリューションを生み出す。その優秀なソリューションをもって、海外へも本格的に進出していこうというものだ。
「2006年8月にコンソーシアムを発足し、その後あまり目立った活動はしていないように見えたかもしれない。しかし、中では活発に活動しており、技術部会では特に、製品を具体的にどう連携させるかを真剣に議論してきた」
すでに実績のあるベンダーが集まったこともあり、個々の製品間でのP2P連携実績はいくつもあったという。それをきちんと整理し発表するだけでも意義のあることだが、技術部会ではより効率の良い体系的な連携を目指している。議論の結果、「トランザクション連携」「マスターの共通規格化」「横断的機能の共通インフラ化」という3つの連携テーマを掲げ、それぞれにグループを起こし、具体的なアウトプット作りを行っている。
梅田氏は、「コンソーシアムがうまくいかない例は、具体的なアウトプットがないコンセプトだけの“仲良しクラブ”の場合だ。MIJSでは、どんどんアウトプットを出そうということを、初期の段階で取り決めている」と話す。
活動成果は「最初から欲張らない」
梅田氏のセッションでは、2006年11月に実際に構築したデータ連携のデモンストレーションも紹介された。MIJSのEAI(Enterprise Application Integration)連携エンジンとなるアプレッソの「DataSpider」で各製品とデータ連携を行い、またプロセスの連携にはBPEL(Business Process Execution Language)を用いて各パッケージでリアルタイムに情報が更新される様子が披露された。
さらに、複数製品を連携させる際に重要となる、共通マスターの規格についても議論を進めているという。「マスターの規格が世の中にないので、新たにパッケージを作ろうとした際には、技術者がよかろうと思うものを、ある種勝手に決めている状態だ。すでに実績のある製品も多いので、新たにマスターを規格化するのは難しい面もあるが、これをやることには大きな意味がある」(梅田氏)。
共通マスターと既存の製品のマスターとの差分は、前出のDataSpiderを使って解決する方針だ。DataSpiderと製品の間に差分を吸収するアダプタを作ることで、製品間で個々に差分を吸収するロジックを作り込む必要を無くす。
データ、プロセス、マスターの3つが連携できれば、製品のSOA的な連携は一通りできあがる。3つめのテーマである横断的機能の共通インフラ化は、さらに踏み込んだSOA本来のサービスの再利用性を高めるための試みだ。
「例えば帳票やログ管理、BI(Business Intelligence)機能のように、どの製品でも持っている共通な機能がある。これらの機能は、製品によってはおまけ的な位置付けのものもある。逆に、インフラ機能だけに特化した製品もある。インフラ機能部分を共通化できれば、ユーザーはその機能を利用する際に共通インタフェース上で新たな操作法などを覚える必要もない。そしてベンダー側は、本来の得意な部分に注力できる」
共通インフラ機能については現在、候補の洗い出しを行い、実現に向けて活動を開始している。コンソーシアムを成功させるには、各社がノウハウを提供することが重要な鍵となる。共通インフラ機能はもちろん、前出のマスター構造なども各社の秘蔵ともいえるノウハウそのものだ。これらを技術者がどんどん共有すれば、コンソーシアムの成果としてアウトプットしていける。
「コンソーシアムでは、現実にできる部分からどんどんやっていく。最初から欲張りすぎるとうまくいかない。これは、ベンダーがパッケージを提供していく方法とよく似ている」
コンソーシアムを立ち上げる前はいいことだから頑張れという声が多かったが、いざ立ち上げてみると「コンソーシアムは難しい、失敗するのでは」とよく言われるそうだ。難しいことは重々承知しているが、だからといって誰も何もしなければ日本のソフトウェアが立ち行かなくなる。「だからこそ、自分たちがチャレンジする。会場に集まったユーザーの方もSIerの方もぜひともわれわれの活動を応援してほしい」(梅田氏)。
セッションの最後に、2007年8月には、先に掲げた3つの技術部会テーマについて成果を発表することがスケジュールの線表とともに示された。具体的なアウトプットがスケジュール通りに出てくれば、MIJSコンソーシアムの活動を応援する声も大きくなるだろう。
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