企業は高速PLCに何を求める?:「エンタープライズPLC」のススメ(3/3 ページ)
一口にPLC製品といっても、低速ながら安定稼働するもの、たくさんつなげられるものなど、それぞれに独自の機能が盛り込まれている。ここでは、企業利用を前提としたPLCの要件を考える。
エンタープライズ向けの仕様はセキュリティ面も厳しい。もちろんコンシューマー向けでもAES(Advanced Encryption Standard)128ビット暗号化技術を採用して安全な通信をサポートしているが、オフィスでは1フロアに異なる部署が混在しているケースが考えられる。そのため、企業向けにはVLAN(仮想LAN)機能やマスター側のPLC機器による認証、RADIUS(ユーザーアクセス)認証といったセキュリティ機能が求められている。運用管理面では、ネットワーク管理の標準プロトコルとしてSNMP(Simple Network Management Protocol)のサポートは必須だ。
またQoS(サービス品質)面での配慮も重要だ。大規模ネットワークでは、端末ごとの帯域制限を設けるようにして、ユーザー間の通信品質の公平性を維持するような工夫を凝らす必要がある。今後、PLCネットワーク上にIP電話や映像などのアプリケーションが乗るようになると、単にネットワークを構築するだけでなく、通信品質が大きく問われるようになるだろう。実際、8段階のQoS機能をサポートする製品や、音声に対応する高速PLCモデム内蔵VoIPアダプタが開発されている。
このように、エンタープライズ向けのPLC機器は、コンシューマー向けに比べて要求される機能は多く、インフラに適用する際には相当な調査と経験が必要になってくる。前述のとおり、現在エンタープライズをメインターゲットとしているのは住友電工、NECグループ(NECネッツアイ、東洋ネットワークシステムズ)、プレミネットなどであるが、いずれも海外での豊富な実績を持つベンダーばかり。とはいえ、高速PLC解禁後間もない現時点では、国内での導入事例はまだこれからというところだ。今後、海外でのノウハウをベースに、日本の環境に最適化されたエンタープライズPLCの導入が進められていくと考えられる。
次回から2回にわたり、エンタープライズ向けとコンシューマー向けPLCに注力するベンダーについて紹介していく。
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