ヘトヘト若手社員よ蘇れ――自律型社員の育成法:“若葉マーク”社員を活性化させる「実感主義」の育成戦略(2/2 ページ)
日常の仕事に疲れ、変化のない毎日が若手社員のやる気を削ぐ。しかし、現場は真剣勝負の戦場。刺激ばかり求められても困る。会社に頼らず、自ら「成長の実感」を探し出す人材の育成法とは。
先端技術、手法を若い社員に叩き込む
大規模なシステム構築を手がけることの多い、日本総研ソリューションズの技術本部、研修部の安藤学氏は、入社3年以内の若い社員の育成プランを構築し日々その成長を見つめ、彼らのレベルアップのための方法論を模索している。安藤氏は次のように話す。
「仕事の現場というのは、成果を出さなければならない場所です。若い社員にも役割が与えられ、それをこなすのが最低条件になる。迷いや葛藤、成長しているという実感といったものをすべて現場の中に求めると無理があるのです」
そこで同社研修部では、入社1年目、2年目、3年目の社員それぞれに研修プログラムを組み、実際の開発実務に役立つ教育を行っている。
「技術的に先端に属する内容です。チームを組んで具体的な案件に合わせて問題解決をしたり、システムを組み上げたりという作業になります。そこが通常の研修とは違うところですね」と安藤氏は話す。さらに氏は続ける。「若い社員にはチームでプロジェクトを動かすことの大変さとダイナミックさを知ってもらいたい。もちろん、実務能力のレベルアップも大切です。しかし協力しあうことで、同世代の仲間に非常に優れた人間がいると分かれば、その人物のレベルに近づくことが目標になる」
現場からいったん若手社員を引き離し、新しい手法や技術を学ばせることで、リフレッシュさせ、研修で得た知識を現場にフィードバックさせる役割も担ってもらおうというわけだ。安藤氏は若手社員に対してこんなアドバイスをしているという。
「まず、会社を頼るなということです。モチベーションが下がったら会社が何かしてくれるだろうという発想は捨てなさいと。本当にやる気のある人間は、会社が何もしてくれなくても仕事が終わってから自分で勉強するのです。昼間の仕事でくたくたに疲れていても、自己研鑽に励む。ただ、それを入社3年以内の若手社員全員に求めるのははっきり言って酷だと思います」
同社の試みは、よく言われるところの「自律型人間」育成の典型といっていいだろう。入社3年以内の若い人材に、現場に没頭しながら、一方で自分なりの自己啓発、研鑽の楽しさと意義を伝えるものだともいえるだろう。仕事に疲れていても自分で気持ちを切り替え、仕事に役立つ何かに取り組み、日常の現場に自分でフィードバックしていける人材、こうした人たちは周囲の人たちにも大きな影響を与えるに違いない。
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