芽吹くコンシューマーPLC、もうすでに一歩先を模索:「エンタープライズPLC」のススメ(3/3 ページ)
現在のITは、まずコンシューマーに受け入れられ、技術や利用法がこなれてくるとビジネス用途へと広がりを見せるのが一般的。その意味では、コンシューマー向けPLC製品の動向も見逃せない。コンシューマー向け市場にいち早くPLCを投入したベンダーや通信事業者に話を聞いた。
一方、PLCを通常のネットワーク構築に利用するだけでなく、将来的にIP放送サービスの手段にも使えないかどうかを検討している。そのため、IP放送に見合う性能を発揮できる製品も視野に入れていくという。「IP放送のサービスは有料で展開するため、品質もシビアにいかなければならない。ブロックノイズが乗ったり映像が途切れないように、しっかりと配慮する必要がある」(池田氏)
さらにKDDIでは、もう1つユニークな展開を始めている。同社では、独自規格によって宅内のテレビ用アンテナ配線を利用し、PLC同様にLANを構築できる「同軸ケーブルモデム」も提供する予定だ。もともとPLCの技術は、すでに敷設されている何らかの伝送路に、元の信号とは異なる信号を重畳させて送る技術だ。つまり、伝送路が電力線でなくてもよいということ。特に同軸ケーブルでは、ノイズが少ないというメリットもある。
「同軸ケーブルモデムは以前から開発していたもの。PLCサービスの提供とたまたまタイミングが合った」(大森氏)という。同軸での使用周波数は4M〜28MHz、伝送速度は最大128Mbps(実効速度は約90Mbps)だ。マルチキャスト対応や優先制御の機能もあり、通信品質が安定している。IP-STB(セットトップボックス)に接続して、「ひかりoneTVサービス」の映像視聴にも利用できる。専用モデムのセットは月額840円でレンタルする。
同社では、すでに提供している無線LANサービスに、PLCと同軸による2種類の宅内LANサービスを加え、LAN構築メニューを拡充していく方針だ。大森氏はKDDIのスタンスについて、「LANの構築をPLCに限っているわけではない。無線LAN、PLC、同軸とそれぞれのメリットがあり、それを生かせる環境に対して使い分けていく」と説明する。また、池田氏は今後の展開について、「商品開発の立場からすると、PLCはあくまでプラットフォームという考え方でしかない。ソリューションとして、どのようなことに利用できるのかという点にこれからも目を向けていきたい」と話す。
すでにNTT東日本もKDDIと同様のキャンペーンを始めている。今後は通信事業者が、コンシューマー向けPLC市場の一翼を担うことになるかもしれない。
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