「第2新卒多数輩出」とならないために:“若葉マーク”社員を活性化させる「実感主義」の育成戦略(3/3 ページ)
若手社員のやる気は、未知の何かが伝えられたときに燃え上がる。その知識、技術で自分の仕事が変る、変る可能性が高いと判断するとアクセル全開になりやすい。しかし、それは現場でやり取りされるもので済ませてはならない。多くの人のやる気に火をつける手立てが必要だ。
採用コストの高い会社のままでいいのか
不況が長引き、現場が殺伐としてベテラン、中堅、新人といった社員同士のコミュニケーションの質が変ってしまった、だから若手社員が辛い仕事の中でそれを乗り越えるきっかけを得られず、喜びや知的興奮を覚える機会も減ったという言い方をするのは簡単だ。
しかし、変質してしまった人間関係が急に理想的な方向に変る可能性は低い。ということは何か手立てを加えるしかない。その一つとして現場の作業の中で、どちらかというと単純な作業を強いられることの多い若手社員をいったん現場から引き離し、新しい技術や知識を徹底的に叩き込み、リフレッシュさせ現場に戻し、現場そのものを変える原動力にするという手立てもある。(参照記事)
入社3年以内の新卒社員の3割以上が退職している、という事実には、いろいろな背景がある。社会そのものが変ってきているのだから、そういう状況は今後も続くという解釈も成り立つ。しかし、いずれにしても次があるかどうか不透明な労働市場の中で、バブル期と同様の現象が起きているのは何かこれまでにない背景があると考えるべきだろう。
そして今後、新卒学生の採用が「買手市場」から「売手市場」に変っても、また同様のことが起きる可能性が高い。不況だろうと、好況だろうと、苦労して採用した若い人材が3年以内に3割退職する時代、若い人材に成長している実感を与えられる会社になるか、状況に流され何もしないまま、高いコストをかけて余剰人員も含めた採用を続けるか、どちらが進むべき道かははっきりしている。
取材を通じて、感じたことは伝えることの大切さ、である。多くの会社が、経験年数の長い人から順々に、ノウハウや知識を必要最低限伝えきれていないのではないだろうか。伝えていたとしてもそれは「口伝」のみで済まされ、いつのまにか記憶から消えていってしまっているのかもしれない。
若い人材に、現場の仕事にひたすらまい進してもらうのも重要だが、ここまで紹介してきた、さまざまなITを使った手法で、仕事に役立つ知識やノウハウを蓄え、伝えるということを意識的に現場以外の部署が取り組んでいく必要がある。それは人事・教育関連の部門かもしれない。ただ、こうした部門と現場に近い誰かが連携して、手立てを考え、実行することになるだろう。
関連記事
- 現場至上主義を捨て、疲労度をコントロールする
かつては日本企業では、現場にすべてがあったのかもしれない。若い人材を上手に育てていく風土もそうだ。しかし、いま現場はそんな余裕を持っていない。人を育てるには新しい手立てが必要なのである。 - 現場カイゼンは若手が担う――下流工程のエキスパートを自覚させる
若手社員が現場で取り組んでいる仕事は本当に「替わりの人間がいくらでもいる」仕事だろうか。上司も若手社員本人も気づかないが、実は現場のロスを改善するヒントを多く含んだ仕事なのかもしれない。早く卒業したい仕事をもう一度振り返る意義は大きい。 - ヘトヘト若手社員よ蘇れ――自律型社員の育成法
日常の仕事に疲れ、変化のない毎日が若手社員のやる気を削ぐ。しかし、現場は真剣勝負の戦場。刺激ばかり求められても困る。会社に頼らず、自ら「成長の実感」を探し出す人材の育成法とは。 - 辞めたくなっても大丈夫――パターン化された思考からの脱出
会社の中にコミュニティサイトを作ることで、若手社員が元気になることがあるという。仕事に関連したもの、自由な発言が許されるもの、さまざまなコミュニティでのやり取りの中で、今まで得られなかった視点の獲得が活性化の秘密だ。 - “若葉マーク”社員を活性化させる「実感主義」の育成戦略:「先輩、どうして隠すんですか!」――知恵の埋蔵量を知らしめよ
「誰も何も教えてくれない」とぶつぶつ文句を言う若手社員は多い。「情けない、誰に何を聞けばいいかぐらい自分で考えろ!」とどなりつけたくもなるが、中堅以上の先輩社員たちの中でも若いころ、「隠さないで教えてくれれば仕事が早く済んだのに」と先輩を恨んだことはなかっただろうか。 - “若葉マーク”社員を活性化させる「実感主義」の育成戦略:「勝ちパターン」教育こそ最強の成長促進剤
ノウハウが属人化され、ブラックスボックスになっているチームに入れても、若手社員の成長は期待通りにはいかない。仕事の手順だけではなく成功しやすい「勝ちパターン」を徹底的に教え込み、成果を出させることで眠っていたモチベーション、成長の実感はぐんぐんアップする。 - “若葉マーク”社員を活性化させる「実感主義」の育成戦略:辞めた人を想うより、いま辞めようとしている人へ
若手社員が退職する理由はさまざまだが、今回は「自分の将来に漠然した不安を抱え、成長している実感がない」という理由を起点にして、成長の実感を抱かせるにはどうすればいいか、それをサポートするITの仕組みは何なのかを探ってみた。 - 構造改革としての2007年問題:ベテラン営業担当のノウハウをITで伝承する。
2007年問題はメインフレームのメンテナンスの問題だけではない。一般企業の事務職にとっても、ベテラン社員の経験やノウハウを継承していくことが大きなテーマになる。 - コラボレーションプラットフォームの今:社内協業は情報の共有から
社内協業=コラボレーションは、さまざまな情報の共有から始まる。どのような情報をいかにうまく共有していくかが、コラボレーションの成功のカギとなる。まずは、現在の社内協業の実態を探ることにしよう。 - データベースの「生きる道」を探る 第9回:社員教育とグループ共有を進めろ!
顧客データベースを活用してマーケティングを成功に導くのに欠かせないという5大ポイント。その3つ目と4つ目について概説したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.