書類の海に溺れる組織――分厚い会議資料が示す注意信号:企業にはびこる間違いだらけのIT経営:第24回(2/2 ページ)
会議の度に分厚い資料が配られ、ほとんど目を通さないままファイリングされる。ペーパーレス社会といわれて久しいが、まだまだこうした組織は多い。紙の無駄も見逃せないが、それらの資料作りに費やされるエネルギーはいかばかりか。
ほぼ毎日書類作成に追われる部署も
大手情報企業B社は、事業部・事業所を対象にした取締役会での会議が実に多い。主なもので予算会議・業績フォローアップ経営会議・製品開発会議・事業方針会議が、各事業部・事業所別に6カ月に1回ずつ開催される。どの事業部・事業所も、取締役会での会議資料作りに年間8回は時間を費やさなければならない。そのほかに、各事業所内で同じような会議が毎月開催されるから、大会議の資料を2カ月に3回は作っていることになる。資料は周到に準備しなければならないので、1回で優に1、2カ月は費やす。B社の場合はプロフィットセンターが設計部門にあるから、設計部門が資料作成に追われる。設計部門は、ほとんど毎日のように会議資料を作っているようで、まるで資料作成が仕事と錯覚された。以上は、組織的所業である。
次に、トップの指示でやむを得ず無意味にして膨大な書類を作成させられる例である。
B社のC事業部は、赤字続きだった。事業部長はいたたまれず、完成予定の製造原価を事前に把握するよう部下に指示を出した。
しかし、それは言語を絶する作業だった。翌月完成予定の製造番号別原価を予測して書類にするわけだが、1カ月で完成する製造番号は200件ほどある。原価計算システムから計算はできるが、いろいろな条件があり正確な原価が反映されていないため、200件を手作業修正しなければならない。それでも精度は低かった。プロフィットセンターの設計部門は、これにかかりきりとなった。赤字が好転しないので、事業部長は予測を3カ月繰り上げるように指示した。設計部門は猛烈に忙しくなった。精度の低い書類作成で手一杯、アクションまで手が回らなかった。これは、トップの個人的所業である。そんなことより、大所の原価低減や売価見直し、固定費低減などにメスを入れた方が、効率的に効果が期待できるのではないか。
このようなどう見ても無駄と思われる作業は、「上からの押し付け」から来るものと思われがちだ。しかし組織全体で積極的に、一度目を通したら「お蔵入り」になる書類作りに励んでいるケースもある。次回はそうした事例について言及していきたい。
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