あるWebプログラマーの作業環境――豪傑の三種の神器【後編】:新入学生/新社会人応援企画(3/3 ページ)
はてなという企業でプログラマーとして働くあの人の開発環境には欠かすことのできない三種の神器が存在する。後編となる今回は、前回紹介できなかった神器を紹介するとともに、意外と知られていないWebプログラマーの生態についてもみてみよう。
コラム:Windows、Mac OS X、UNIXの併用
本編にもあるとおり、わたしはWindows、Mac OS X、UNIXを併用しています。もちろんUNIXだけに絞るのもアリなのですが、そうはしていません。これには幾つかの理由があります。
さまざまな環境を利用できるようにしておく
Webアプリケーションのデバッグにはさまざまな環境が必要になります。その理由として、1つはどんなOSとブラウザでも動くように考慮するため、もう1つはデバッグ用のツールのためです。
昨今では、ブラウザの仕様差もだいぶ縮まってきているものの、やはりそれぞれのOSやブラウザで多少の癖があったりします。それらをいつでも試せる環境を用意しておくと、検証やデバッグが迅速に行えるため、結果としてアプリケーションのバグフィックスや機能追加を素早く行うことができます。
また、ApacheやMySQLなどオープンソースのソフトウェア周りには、それらツールを管理するための便利なソフトウェアがたくさんあります。その中にはWindowsやMac OS Xでしか使えないもの、あるいはUNIXでしか使えないものもあります。それらを使える機会を逃さないためにも、複数のプラットフォーム(OS)を扱えるようにしておくのは良い選択だと思っています。
プレゼンテーション用にはやはりWindowsやMac OS X
わたしは仕事の都合上、カンファレンスなどでプレゼンする機会が多くあります。すると、ノートPCが必要になります。いまどきのカンファレンスは、「ノートPCを持ち込んで自分のPCでプレゼンする」というのが普通です。そしてプレゼンテーションに使うツールは、僕の場合PowerPointかKeynoteなので、どうしても「WindowsかMac OS Xが欲しい」ということになります。なおかつ、「そのPCで開発もしたい」となると、UNIXが必要になって併用することになります。
プレゼンテーション用ツールはUNIXにも優れたものがありますし、最近ではブラウザでプレゼンテーションをする人も増えてきました。先日訪れたカンファレンスでは、JavaScriptでプレゼンツールを自作している人も結構いました。が、わたしにはプレゼンツールをHackするモチベーションはほとんどないので(笑)、PowerPointやKeynoteに頼りきりです。
GUIとCUIの良いとこ取り
開発以外の作業でも、いざというときにUNIXのCUIが使えると便利な場面というのは多々あります。例えば、ブラウザで閲覧しているサイトにリンクの一覧があるとします。「この一覧、何行あるのかな」なんて数えたいとき(例えば何かの名簿ですとか)。こういうときにUNIXのコマンドラインツールがすぐ使える環境があると、
$ cat | wc -l
としてからこの端末にリンクの一覧をコピー&ペーストしてCtrl+Dキーを押せば、
223
と即座に結果を返してくれます。ほかにも、簡単な足し算や引き算を行うときに、perlshという対話型のperlシェルを使うと、
$ perlsh
main[25]$ 1 + 1
2
main[26]$ log 10
2.30258509299405
main[27]$
という感じで、普段使い慣れたPerlの構文で計算できます。OSに標準搭載の計算機よりも手早く済むし高機能、便利。こんな具合に、日ごろのちょっとした作業をこなすときに、UNIXの基本的なコマンドラインツールが役に立ちます。テキストの置換しかり、検索しかり、計算しかり。
一方で、例えばWebブラウジングを快適にするツールですとか、表計算ソフトやプレゼンテーションといったGUI周りの環境に関して言うと、近ごろのLinuxディストリビューションなどではデスクトップ環境が充実してきているとはいえ、やはり細かい使い勝手、ルック&フィール、サードパーティー製ソフトの充実面から言ってもWindowsやMac OSX に軍配が上がるでしょう。
そこで、「GUIと、CUIの良いとこ取りをするために複数の環境を併用する」というのがわたしなりの解決策でした。
まとめ
駆け足でしたが、2回にわたってわたしの開発環境の一端を紹介してきました。
今回紹介した幾つかのソフトウェアのうち、もう何年もそれを使っている……というのは実はEmacsだけだったりします。さまざまなソフトウェアを試して、ようやく手になじんできたかな……と思っていても、探せばより良い方法が見つかります。Webで先人のノウハウを幾らでも知ることができるこのご時世、ツールの探求に終わりはないのかもしれませんね。
しかし、終わりのない探求ばかりを続けていては、本業であるところの創造の作業がおろそかになってしまいます。先たちの良いノウハウをどんどん盗んで、効率良く自分のものにしたいですね。本稿が皆さんにとって、何かの助けになればうれしく思います。
本記事は、オープンソースマガジン2006年5月号「オープンソースで作る新生活環境」を再構成したものです。
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