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エンタープライズ2.0で柔らかい知識共有が始まるよく効くエンタープライズサーチの処方箋(2/3 ページ)

企業がWeb 2.0を取り込むようになると、ネット上でブログやSNSが普及したように、企業内でもボトムアップのコンテンツが急増していく。それを集合知として分析し、企業価値に結び付けるのがエンタープライズサーチの役割だ。

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 インターネットで育ってきた技術のうち、コンシューマーの間で普及が先行したサービスが企業内に遅れて入ることを「産消逆転」が起こっていると表現する。検索の世界も同様で、従来、企業向けの検索エンジンとしては、ジャストシステムの「ConceptBase」や米インクトミの「Inktomi」などがあったものの、広く普及することはなかった。

 それに対して、昨今エンタープライズサーチプラットフォーム(ESP)としての盛り上がりの背景には、GoogleやYahoo!などのコンシューマーサイドにおける検索の利便性、高度化の体験が契機となって、それを企業内に持ち込もうとしている動きがある。

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「組織内の情報の持ち方が変わることで、エンタープライズサーチに新たな役割が期待できるようになる」と話すNRI情報技術本部の亀津氏

 また一方で、ESPには業務ニーズに応じて柔軟にカスタマイズできる高度な機能と拡張性を持つものも存在するが、この産消逆転によって、従来ESPとして販売されてきたソリューションの位置づけが変わってくると亀津氏は言う。

 「特定の業務分野に特化したニーズにも応えられる、複雑かつカスタマイズ性が高い既存のESPとは別に、GoogleやYahoo!のように組織内でも気軽に使える、低価格で利用の敷居の低いWeb由来のESPへの期待が新たに高まるだろう」

顧客の知恵のスピードについて行けない

 ただし、エンタープライズサーチでEGMを企業価値につなげるためには、できるだけ多くのユーザーを巻き込めるような形で始めることが重要となる。あるいは、そのカルチャーが企業にあるかどうか、それが成否を分けるという(図2)。

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図2●Web 2.0が機能するための“クリティカルマス”(クリックで拡大)

 「Web 2.0により顧客が賢くなってきているので、営業部門やコールセンターなどのフロント側も横断的に情報を共有し合わないと、顧客の知恵や口コミの広がりのスピードについて行けない。タギングによる集合知を形成する際も、組織の枠にこだわらずどんどん情報を出していくことが重要」と亀津氏。

 また、検索エンジンの進化の中で、検索対象が広がって精度が高くなっているとともに、数値を含めた分析を担うようになってきたという(図3)。

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図3●検索エンジンの構成と分析アプリケーションとしての可能性(クリックで拡大)

 検索エンジンは、Web上やファイルサーバなどをクローリングしてデータを集める過程で、巨大なデータベースが構築される。そのため、単一のクエリに答えを返すだけではなく、別の見方を提案することも検索技術に含まれるようになってきた。例えば、社内ブログや社内SNSの記事が増えてくれば、社員が書いたブログ記事を検索するだけでなく、収集した記事の内容を解析する機能もエンタープライズサーチに求められるだろう。

 例えば、コンシューマーの世界で「kizashi.jp」や「Yahoo!ブログ検索」が提供しているような、あるキーワードがどれだけブログで話題になったか、その話題がポジティブかネガティブかが分かるような機能である。このような分析機能を企業内検索でも利用できれば、組織内でどんなキーワードが多く書かれているかなどを知ることで、新事業の展開やナレッジマネジメントの推進など、次の施策につなげるためのきっかけになるという。

 さらに、内部統制上問題となるメールや文書が発生していないかどうかを調べる上で、検索エンジンが活用される可能性もある。大量の文書から必要なものを引っ張り出すのは検索エンジンならではの役割だからだ。

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