ちょっぴりLinuxの開発/配布体制が語れるようになる基礎知識:Linux通へのステップバイステップ(2/2 ページ)
インストールが楽になるようにと始まったディストリビューションだが、その開発/配布体制にも発展の流れがある。ライセンスの話も整理しながらポイントをまとめていこう。
ディストリビューション開発でもオープン化へ
インターネットが普及し、情報の流通コストが限りなく0になった現在、情報サービス産業は大きく変わってきている。ソフトウェア開発も例外ではない。物理的制約を受けるハードウェアが二次産業、ソフトウェア開発を三次産業と見ると分かりやすい構造だ。
オープンな開発形態の成功例としてLinuxカーネルやWebサーバApacheなどのアプリケーションがある。それぞれの発展は、それぞれの作業量/複雑さ以上に、ユーザーからの要望/開発支援を迅速に得られたからでもある。1998年にNetscape Communicatorのソースが公開されオープンな開発が試みられたが、当時うまくいかなかったのは、常時接続が普及しきっていない背景があったからだろう。
LinuxカーネルやApacheがオープンソースのモデルで成功したように、ソフトウェアの集合であるディストリビューションも、多少の時間が掛かるにしてもその方向に進むのは自然だ。イメージとしては図4のようになるだろう。より多様なものも、開発が進み、こなれてくることによって、真似されたり、勝手に利用されたりしてしまうと危惧するよりも、オープンにして発展の速度を上げた方が効率が良くなる。将来的にはビジネスワークそのものもオープンソースの文化が取り入れられていくだろう。
外部団体で開発し、商用化する方向へ
Red Hatは2002年に、Red Hat Linuxを無償のFedora Coreと、商用版のRed Hat Enterprise Linuxに分割した。ユーザーからの協力を得てFedora Coreで新機能の開発を行い、それをRed Hat Enterprise Linuxに反映させていくという流れだ。Novellも2005年にopenSUSEプロジェクトを用意し、ユーザー開発者の取り込みを狙っている。
しかし、先行するFedora Coreでは一般の開発者があまり集まらず、Red Hatは2005年6月に、Fedora Foundationを設立してプロジェクトを自社から独立させることを発表している。単なるプロジェクトの場合はディストリビューター内の開発が外部にも解放される状態だが、Foundation(財団)となることで、著作権管理なども移管する独立した存在になる(図5)。成功しているApacheやMozillaも、Foundationによるプロジェクトでの開発だ。
サブスクリプション=定期購読
Red Hatは現在、サブスクリプション方式のライセンス形態を取っている。サブスクリプションとは、もともと寄付金や会費、雑誌などの定期購読を意味するものである。定期購読は一般に何らかの割引があり、サブスクリプションはお得感のあるイメージの良い言葉である。
IT業界でサブスクリプションというと、代表的なものは、マイクロソフトのMSDN*など開発者向けの情報提供プログラムや、ソフトウェアの技術サポートである。この形態は従来からあり、Red Hatが特段珍しいわけではない。保守/サポート/商用製品に対する一時対価としていたLinuxディストリビューション事業において、サブスクリプションのみを柱に置いたことがポイントである。ソフトウェア自体に実質的に対価を求めず、一定期間(通常1年)の間、アップデートなどのサポートが得られる権利を得るという形態だ。
この形態によるモデルはいまのところうまく機能しており、今後は、ディストリビューション購入といえばサブスクリプション購入という形態が一般化、また一般に認知されていく可能性は高い。
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本記事は、オープンソースマガジン2005年11月号「Linuxディストリビューションのいま」を再構成したものです。
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