Red Hat Enterprise Linux 5投入と“リポジショニング”――エンタープライズ市場への注力:Red Hatの新展開(2/2 ページ)
Red Hatは3月15日に“Red Hat Enterprise Linux 5”の発表を行なったが、この発表の中核メッセージは、実は新製品ではなく、Red Hatがエンタープライズ市場に向けて従来以上に本格的に取り組みんでいくことを表明したことにある。
今後の展望
同氏はまた、米国発のニュースとして紹介されたリアルタイム性の強化およびRed Hat Enterprise Linux 6の見通しについても言及した。
「開発と技術革新のペースは今後も着実に進行していく。現在も幾つかのイニシアチブが進行中だ。現時点でどのような成果が“Red Hat Enterprise Linux 6”に盛り込まれるかを明言することはできないが、現在われわれが注目している分野を一般論的に挙げることはできる。例えば、オープンソースソフトウェアに対応するシステム管理ツールだ。IT運用管理コストは、今後も継続的に低減を図っていくことが求められている。また、仮想化技術のパフォーマンス改善も大きなテーマだ。仮想化によってITインフラは柔軟性を高め、コスト効率も高まるので、今後仮想化はさらに重要な存在となっていく。また、報道にもあったとおり、リアルタイム機能の実装にも取り組みんでいる。金融取引や制御、防衛分野などのミッションクリティカルアプリケーションでの利用を想定し、システムの応答時間を予測可能な範囲に収める取り組みだ。このほかにも進行中のプロジェクトは膨大にあり、そのすべてにここで言及することはできないが、互換性の向上やオープンな標準の確立にも力を入れている」
なお、リアルタイム性の強化は、かつてUNIXがメインフレームに対抗してハイエンドのミッションクリティカル市場に食い込んでいく際にも求められた要件だ。オンライントランザクション処理など、ミッションクリティカルなビジネスアプリケーションでは、一定時間内に応答が返らないとエラーになる処理が多い。最近だと、携帯電話の番号ポータビリティ制導入直後にソフトバンク・モバイルがトラブルを起こしたが、このときも、処理の集中により、あらかじめ事業者間で取り決めた応答時間内に回答を返すことがことができなかったことがシステムダウンの原因になっている。
リアルタイム性の強化は、フロントエンドシステムを中心に利用する場合にはさほど重視されない部分だが、ミッションクリティカル分野での利用を考えると不可欠となる。その対応のいきさつも含め、現在のLinuxはかつてUNIXが辿った道を忠実になぞっているようにも見える。UNIXの先例を手本とすることができ、かつ根本的なアーキテクチャはUNIXと同一といえるLinuxは、急速にUNIXに追いつこうとしているし、それによって現在のUNIXサーバの市場すべてをターゲットとしようとしている。
Red Hatの新たなポジショニング
最後に、クレンショウ氏に「Red Hat自身は自社をどう位置付けているのか。Open Source Software Vendorなのか、Enterprise Solution Providerなのか」と聞いてみた際の回答をご紹介したい。
「Red Hatはユニークなポジションにある企業であり、オープンソースソフトウェアをエンタープライズユーザーに提供することに取り組んでいる。Red Hatは全面的にオープンソースコミュニティーに参加しており、オープンソースに全面的にコミットしている。同時に、エンタープライズユーザーに適切なソリューションを提供することにも全面的にコミットしている。オープンソースへの取り組みとエンタープライズユーザーへの取り組みをRed Hatと同じレベルで実現している『エンタープライズ市場にコミットする純粋なオープンソースソフトウェア企業』はほかに一社もない。Red Hatは、オープンソースソフトウェアのベンダーであると同時にエンタープライズ・ソリューション・プロバイダーであり、いわばその2つの中間に位置する企業だ。Red Hatはオープンソースのイノベーションモデルを採用し、これを使って人々がテクノロジーを購入して利用するやり方を変えていくことを強く意識している」
次回は、こうしたRed Hatのメッセージの変化が日本市場にどのような形で導入されていくのかについて紹介したい。
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