ものを作ってハッカーはゆく――まつもとゆきひろ:ハッカー養成塾(2/2 ページ)
オープンソースマガジンに掲載されるやいなや、オープンソースコミュニティーに大反響を巻き起こした人気連載「ハッカー養成塾!」がITmedia上で装いも新たに登場! 名だたるハッカーたちがバトン形式で講師として参加する世にもまれな塾へようこそ。
ハッカー人世訓
ハッカーの定義はあいまいなものです。ハッカーとは、「ハックする人」以上の意味を持たず、むしろある種の性格分類だからです。その性格がプログラミングに向かうとき、人はその人をハッカーと呼びますし、分野が違えば「異端者」、「改革者」、「革新派」などと呼ばれることでしょう。
さて、そのようなハッカーが幸せに生きるための、人世訓のようなものを幾つか紹介しましょう。幾つかは、わたしの「ハッカー人生」から直接学んだものです。
「できない」と言わない。「やらない」と言う
プログラミングの世界で不可能なことはめったにありません。制限は時間と手間と知識の限界だけです。ですから、いつでも「やればできる」のです。こう考えれば「やりたいことをやらない」理由が減ります。
欲しいものがなければ自分で作ろう
何かを作ろうとしたとき、世の中に同じものがすでにあるなら無駄になります。そのような無駄は「車輪の再発明」として嫌われます。しかし、車輪が存在しないとき、あるいは自分ならもっと良い車輪が作れると感じたときには、ためらわずに作り始めるのがハッカーというものです。ちょっと偉くなると、自分で作る代わりに部下に作らせたりします ;-)。
制約を打ち壊せ
あらゆる制約はハッカーの敵です。自分の能力、意思、行動、言論への制約により不愉快な思いをするときには、それを取り除くべく行動するのがハッカー的です。フリーソフトウェア運動も、オープンソースも、そのようにして発生しました。ただ、あまり過激になって非合法活動(クラッキングとか)に身を落とさないよう、ここでは忠告しておきます。
コミュニケーションを忘れない
ハッキング能力とコミュニケーション能力は比例しません。しかし、ハッカーとして「作品」を一人で完成させることができる人は稀です。ですから、(例え苦手でも)コミュニケーションに時間を取ることが、ハッカーとして「成功」するのに役立ちそうです。
まとめ
大学卒業以来、「ハッカーでも社会人として生きていける」ことを目標に生きてきました。いまのところ何とか実現できているようです。皆さんもハッキングと幸せな生活を両立させてくださいませ。Happy Hacking!
さて、次回はGRUBの開発者として知られる奥地さんにバトンを渡そうと思います。
本記事は、オープンソースマガジン2005年12月号「ハッカー養成塾!」を再構成したものです。
関連記事
- まつもとゆきひろ――第1回:オープンソースという「お仕事」
オープンソースソフトウェアの開発にかかわっている人のインタビューをシリーズでお届けする「Open Source People」。記念すべき第1回はMatzのニックネームでも知られるまつもとゆきひろ氏の「人となり」に迫る。 - まつもとゆきひろ――第2回:Rubyを開発するということ
周囲がまつもと氏のまれたぐいまれなプログラミング言語アーキテクトとしての才能に気づき、まつもとがそれに専念できるような体制が自然に形作られつつある――Rubyはいま、そういう状況にあるように見える。今回は、Rubyの開発におけるまつもと氏の考えに迫る。 - まつもとゆきひろ――第3回:僕の存在価値はそこにある
過去2回にわたってお届けしてきたまつもとゆきひろ氏へのインタビューは今回が最終回となる。「誰かがRubyを実装し直したとしたら、いまのRubyよりもずっとエレガントで速いものができるはず」と語るまつもと氏は自身の存在価値をどのように見ているのかに迫る。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.