【第2回】「使えるプレゼンス」を考える:IP電話の誤解を解く(3/3 ページ)
単にステータスを設定するだけでは、ビジネスの現場で使えるプレゼンスにはならない。それを設定する人の「想い」をくみ取ると、IP電話はどう変わるのか。
状態選択肢は業種ごとに異なる
ところで、N900iLやWindows Messenger 5.0で選択できる状態は、表1のようになっている。
この表では、N900iLは13個、Windows Messengerは7個で固定されている。これを業種によっては足らないと感じる場合もあれば、必要以上に多いと思うかもしれない。
例えば、警備保障会社なら「巡回中」(patrol)といったステータスが欲しい場合があると考えられる。また、「食事中」は「休憩中」でまかなえるという考え方をすれば、不要な選択肢を減らして、設定の際に目的の状態を選ぶ手間を最小限にしたいこともあるだろう。
先に説明した着信が抑止されるようにする部分についても、企業ごとに考え方はいろいろとある。例えば「商談中」(biz_talk)といった状態を設けて、「会議中」(meeting)とは明確に使い分け、逆に「会議中」は通常着信に応じる状態にしたい場合もある。
したがって、これらの状態選択肢はシステム(顧客)ごとに自由にカスタマイズできるようにすべきだろう。このように考えた結果、表2のような実装にすることにした。
まず、各UA(端末)には表2のような状態設定表を持たせる。表示可否の列にはYes/Noを選べるようにし、ユーザー操作による状態選択時、その選択肢として表示する/しないを選べるようする。また、通常受付の列にもYes/Noで選択できるようにして、Priorityなしの通常呼に対しても応じる/応じないを設定できるようにする。
さらに、緊急受付のYes/Noにて緊急呼び出しに鳴動する/しないを選択し、不在や出張中で必ず拒否できるようにすることで、SIPサーバ側でほかの在席者に転送するような運用も可能になる。
もちろん、ラベル名やステータス値といった状態選択肢を顧客システムごとに作り出して、個々の企業、業務にさらにマッチしたステータスを利用できるようにする。ちなみにこの実装も、鳥取三洋電機製SIP-1900/2100/2400では同等の形で具現化されており、デフォルト値として持っている状態と合わせると、最大で20個の状態設定が行えるようになっている。
いかがだろう? ここまでに説明してきた実装によって、プレゼンス機能がよりビジネスシーンにマッチした形で利用できるようになるのではないだろうか。
寺下義文
日立コミュニケーションテクノロジー IPネットワークセンタ 開発部 SIP:OFFICEグループ技師。1986年、日立インフォメーションテクノロジーに入社。以来9年間データベース関連製品のプログラマーを経験し、1995年からネットワークSEとして多数の大規模ネットワークの構築も経験。さらに2003年から自社VoIP製品である「SIP:OFFICE」の開発に従事。2006年10月より事業統合により同社に転属。難解な技術を平易な言葉で表現することには定評がある。燃料は酒。これがないと走らない。
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