【第3回】ビジネスプレゼンスの可能性を広げるテクニック:IP電話の誤解を解く(3/3 ページ)
ビジネスマンが出張中、あるいは休暇中の際、電話がどのようにかかってほしいのか。そこで、ステータスに条件、選択肢を加えるだけでも実用的なプレゼンスができあがる。
また、このようなアドレス帳ページを用意することは、第1回で説明したバースト負荷の問題についても緩和してくれることになる。なぜなら、このページ(コンテンツ)を用意するアドレス帳サーバのみが全員の状態をリアルタイムで把握するだけでよく、各ユーザーはこのページにアクセスするだけとなるため、プレゼンスサーバに対して著しいバーストが発生しにくくなるのだ。それは図2のシーケンスをご覧いただければ分かる。
もし、全員が6000や6006に対して状態通知要求である「SUBSCRIBE」を発行していたならば、F06やF10のNOTIFYも要求された数分フォーキング(フォークのように呼が複数に分かれて着信すること)されることになる。しかし、アドレス帳サーバのみがこれを行い、一方、ユーザーはこのアドレス帳が提供するWebページを見たいときだけ見るようにすれば、プレゼンスサーバに対して過負荷は当然発生しない。さらに、アドレス帳サーバに対しても、意図的に一斉アクセス(アタック)を試みない限り、アクセスの著しい偏りは発生しないことになる。
これなら、ビジネスユースとしてより現実的な状態把握が行えるようになるのではないだろうか。
最後に
本連載では、かなり具体的ななSIPシーケンスを明示した上で、ビジネスで使えるプレゼンスを説明してきた。正直ここまで明らかとすることは、今回のプレゼンス実装の共同開発に携わった4社(スカイウェイブ、鳥取三洋電機、日立電線、日立コミュニケーションテクノロジー)の企業にとって、決して有利なことではない。なぜなら、同様の実装を競合他社も始める可能性が高く、われわれの持つ優位性が奪われる恐れがあるからだ。
しかしながら、われわれが独自性を極めようとしているのではなく、あくまでオープンな取り組みで進めている(RFCにのっとっている)こと、また、プレゼンスが持つ可能性が十分にユーザーに理解されなければ、IP電話自体のさらなる発展が望めなくなってしまうと考えたため、ある程度のリスクは覚悟の上で公開に踏み切った。
もちろんいくらかの企業秘密を残してはいるが、ただ、少なからずリスクを負ってまで開示した今回の記事が、IP電話のさらなる発展に寄与することを願ってやまない。
寺下義文
日立コミュニケーションテクノロジー ネットワークソリューションセンタ ソリューション・インテグレーション部 SIP:OFFICEグループ技師。1986年、日立インフォメーションテクノロジーに入社。以来9年間データベース関連製品のプログラマーを経験し、1995年からネットワークSEとして多数の大規模ネットワークの構築も経験。さらに2003年から自社VoIP製品である「SIP:OFFICE」の開発に従事。2006年10月より事業統合により同社に転属。難解な技術を平易な言葉で表現することには定評がある。燃料は酒。これがないと走らない。
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