「見える化」願望が隠してしまうものとは?:立ちはだかるのは「経営の壁」(2/2 ページ)
経営や業務の「見える化」は、多くの経営者や現場マネジャーが早く実現したいと考える改革の1つだ。しかし実現を急ぐあまり、単純に既存システムを連携させたり、パッケージをベンダー任せにして導入しても失敗する。「見える化」の実現にはシステム構築の手法だけでなく、「経営の壁」ともいうべきものが立ちはだかる。
全体最適への「通行手形」
「経営の見える化」というのは、非常に魅力的なフレーズだ。しかし、事は簡単ではない。図を見てもらっても分かる通り、上場企業の7割程度が、ステージ2の部門内最適に止まっている。要するに個別の特定業務を改善することはできていても、次のステップである、ITによる組織全体の最適化まではなかなか進められていないのである。
「経営の見える化」はシステム面で言えば、部分最適から全体最適の入り口に進むための「通行手形」のようなものなのかもしれない。図のステージ2に進み、製品としてのさまざまなシステム製品を導入していても、実際には現場では活用されず、不良資産化してしまうケースも多い。現実にはステージ1と2の間を行ったりきたりしている大企業も多いのである。
ITによる部門内最適の集積が全体最適化のきっかけとなると考えれば、ステージ2からステージ3に移行することは、難しいことではない。部門内でのIT化は多くの企業で進んでいる。
移行の壁になるものとして考えられるのは、IT導入の失敗事例でよく言われる「経営者が何をしたいのか、組織全体に伝わっていなかった」ということだ。それは例えば「現場のスタッフ配置をもっと効率よく」とか「原材料の購入費用をできるだけ抑える」といった具体的な目標の集積なのである。「見える」ことが目的なのではない。
ITCの活動をこうした企業のIT化のステージと照らし合わせてみると興味深い。
ITCはまさに部門ごとのIT化も推進するが、さらに全体最適を目指して経営者にアドバイスをしていく存在だといえる。「経営の見える化」は大企業だけが取り組んでいることではない。中小企業は大企業よりも熱心に「見える化」の実現を求めている。そうした意味でも、中小企業が取り組む「見える化」への挑戦は中身の濃い事例になる。ちょっとした無駄や判断ミスが経営そのものに大きな影響を及ぼす中小企業にとって、「見える化」は急務だからである。
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