「ITこわい」の真相――ついベンダーを責めたくなって…:乗り越えたい「言葉の壁」(2/2 ページ)
言葉の壁は、同じ言語を話している者同士でも立ちはだかることがある。例えばユーザー企業とITベンダー。ベンダー側の「業務に対する無理解」は常々ユーザー側から指摘されるところだが、ユーザー側の「説明責任」はどうなのだろうか。
共通言語を作るまで
共通言語を構築するのはITC、あるいはIT部門の役目かもしれないが、ユーザーが自分たちの要望をできるだけ早く、正確に伝えるためにも、奥山氏が指摘することに耳を傾けるべきだろう。
奥山氏は次のようにも話す。
「日本の経済を支えているのは、中小企業であるということははっきりしています。ただ、日本の中小企業の強さを説明するときに、特殊な技能を持った人たちのことを喧伝するだけではダメなのです。『国宝級』の技術者はすばらしい人たちですが、本来は組織力やネットワーク力で勝負していかなければなりません。ここ数年、例えば大田区にはITCの人たちが各中小企業とコミュニケーションをとり始めています。ITに対する不信感はまだまだ根強いですが、粘り強い活動を通してしか、その壁を取り払うことはできないでしょう」
奥山氏の話すこうしたITCの活動の中心となるものは、まず自分たちの会社の内容についてどこまで噛み砕いた説明ができるか、そして互いに理解を深めることができるかということに尽きる。すべてはそこから始まる。
考えてみると、ユーザー側は、意外に自分たちの仕事をまったくの部外者に説明する機会は少ないのではないだろうか。「何をしている会社ですか」と聞かれて、「自動車の部品を作っています」という説明は簡単だ。しかしそれらをどのように作っているか、どんな失敗が起きるのか、失敗の原因は何なのか、働いている人たちは普段どんな仕事をしているのか、どうしてその仕事をしているのか、などといった問いに対して誰でも分かるように説明するのは、時間もかかるしたやすいことではない。
もちろん、聞く側の能力の問題もあるだろうが、平均的な能力の持ち主に、例えば中学生や高校生を想定して、自分たちの仕事をできるだけ理解してもらうにはどうしたらいいか、などということは日々の仕事の中で考えることは少ないだろう。もしそれができれば、業務内容をベンダーの担当者に理解してもらうことは、ほぼ、できるのではないか。
こうした基本的な理解の上に奥山氏の言う「共通言語」を構築できるのだ。
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