オープンソース化に満足?――Javaの父ゴスリング氏に聞く(後編)(2/2 ページ)
Java言語の優位性、JVMへの課題、次世代の言語には何が必要なのか? ゴスリング氏は、プログラム言語に関するさまざまな見解を、インタビューで語った。
―― 次に登場する大物は何だと思いますか? 次の大物として、どんな言語あるいはプログラミング環境が登場するのでしょうか? それが何であるかまだ分からないとしたら、どういった技術が求められていると思いますか?
ゴスリング 次の大物で求められる技術のスケールをどう見るかによります。新技術の開発は常に、何かほかのものにサービスを提供するのが目的です。ですから次の大物の開発は、Webの社会的進化あるいは技術の方向性における次の大きな波が引き金になります。Javaの開発の引き金になった要因に注目すると、すべてネットワークに関連したものです。開発初期段階でのJavaのデザインに関する決定のほとんどは、スタンドアロンコンピューティングとネットワークコンピューティングとの違いに関するものでした。
そういったレベルの変化を引き起こす次の大物は何かというのが、ご質問の意味だと思いますが、わたしの予想では、その候補は2つほどあります。わたしが全般的に関心を抱いているのは、マルチスレッディングの方向性です。ムーアの法則が言う指数関数的増大傾向は、CPUコアの数の方にシフトしてきました。Javaは優れたスレッディングモデルを備えており、トランザクション処理などにも問題なく対応することができます。コアの数は2年ごとに倍増しているように思えます。今日の最先端のデスクトップマシンは8コアCPUを搭載しています。20年後には、8000コアCPUを搭載したデスクトップマシンが出回っているかもしれません。そんなマシン用にプログラムを書ける人がいるでしょうか。
わたしにとって特に興味深い問題の1つは、この転換がどんなふうに進み、どこへ向かうのかということです。
わたしが関心のある分野の1つがAIの分野です。マシンが8000コアというレベルのパワーに到達すれば、多くのAI技術が実用的になるでしょう。
デスクトップPCの処理能力が実際に人間の頭脳の能力を超えるのはいつかという問題に関する研究も行われており、その多くは2022年という予測を示しています。その世界では、プログラミングはどんなふうになるのでしょうか。また、人々とこれらのマシンの関係はどんな感じになるのでしょうか。
―― EclipseはJavaの世界のイノベーションを促進するのに貢献したと考えていますか?
ゴスリング ええ、もちろんです。NetBeansの開発は、いわばのんびりと進められていました。そこにIBMがいきなりEclipseをリリースしたのです。「さあ、ひとつ競争をしようではないか」といった感じでした。
―― しかし単なる競争にとどまらず、彼らが立ち上げたプロジェクトの一部はJavaプラットフォームを大きく発展させました。
ゴスリング 確かにそうです。しかしこれは、軍事衝突ではなくスポーツ試合という意味での競争なのです。
―― 青少年、マイノリティー、女性がコンピュータサイエンスに携わる機会を拡大するためにSunは何かしていますか? 教育関連の構想はありますか?
ゴスリング Sunはある意味で、(カリフォルニア大学)バークレー校のヒッピー上がりのおじさん集団です。金もうけも否定しませんが、われわれは1つの理念を目指した集団なのです。一種、変わったタイプの企業だと言えるでしょう。
われわれは教育に力を入れています。BlueJ構想も支援しています。これは、青少年の教育に熱心な教育者らが進めている取り組みです。彼らが抱えている問題の1つは、どうすれば青少年にプログラミングを学ぶ意欲を持たせられるかということです。そこで彼らが編み出したのがGreenfootです。これはBlueJを拡張したもので、Javaを使って独自のビデオゲームを作成することができます。その反響は上々のようです。
―― 娘がいらっしゃると聞きましたが、より多くの女性や女の子たちがコンピュータサイエンスに興味を持つようにするためのアドバイスはありますか? 魔法の薬はないのでしょうか?
ゴスリング わたしには娘が2人おりますが、残念ながら、そういった薬は知りません。わたしには、一般的なことは言えません。2つの個別ケースしか知らないからです。上の娘の場合、わたしが反面教師だったらしく、この分野で何かに挑戦してみることにさえ抵抗するようになりました。
彼女に技術への興味を抱かせようと、わたしは大いに努力しました。技術に関連した本やオモチャをたくさん買い与えたのですが、彼女は全然興味を示しませんでした。しかし歴史の本は別でした。9歳のころにウィンストン・チャーチルの「英語国民の歴史」を読み、それとほぼ同じころに「我が闘争」も読んだのです。わたしはこういったものを読むのは苦手です。しかし彼女は先学期にプログラミングコースを選択し、面白かったと白状ました。
しかし下の娘はまったく違います。彼女はLegoブロックでものを作るのが好きで、わたしたちは彼女が技術者になるのではないかと思っています。
そんなわけで、わたしには女性や女の子に影響を与える方法は分かりません。彼女たちに本当に影響を与えることはできないと思います。われわれにできるのは、彼女たちにとっての社会的障害を取り除くことだけです。
―― OSGi(Open Services Gateway Initiative)の人気については、どう思いますか。Sunは当初、OSGiを支援していましたが、その後、手を引きましたね。
ゴスリング OSGiは奇妙な特許囲い込み組織になってしまいました。
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