「報告のための報告」が飛び交う組織の実態:企業にはびこる間違いだらけのIT経営:第28回(2/2 ページ)
業務の報告が「形式主義」に陥ると「報告のための報告」が生まれる。多くのスタッフが無駄な時間をとられ、疲弊していくのを防ぐ基本は「現認主義」の考え方だ。
BIツールでビジネスプロセス監視
では、このような馬鹿げた報告のための報告に対して、どのように対処すればよいのか。
それは、結局トップの意向如何である。
無駄な報告のための報告をなくすにはIT活用が一番だが、現認主義が基本になる。
まず報告のためにITを活用するとなれば、グループウェアやメールの活用が考えられる。しかしそれらは報告の手段であって、報告の内容は従来と変わらないから意味がない。そこでBIの利用が考えられる。従来、BIは販売情報、生産情報、あるいは財務・会計情報などのデータを分析して、経営戦略判断に有益な情報を提供する単なるツールと考えられていた。
そこから脱皮して、定量情報とともに行動実績や計画などの定性情報も入力し、ビジネスプロセスを監視して重要変化について警告を発し、問題提起をする。例えば予想外の受注や事故など例外事態、競合他社の動きなどの情報を得ることができる。幹部が、そういう企業活動の実態をリアルタイムで自ら検索して知ることのできるシステムを構築すべきだ。
いま注目を集めているBAM(Business Activity Monitoring)は、その目的に近いツールである。この種ツールを、トップや経営者が自ら使うことによって情報を得ることができる。いちいち部下に週報や日報などの報告を形式的に提出させる必要はない。
しかし、このシステム導入やカスタマイズには大変な力を要する。さらに、運用上「入力」が重要である。定性的情報も必要なだけに、システムを生かすも殺すも入力次第だ。トップが本気で取り組まなければ、システム構築はならず、入力がシステムを殺す。
形式的な報告を断ち切る
さて、基本となる現認主義だが、報告だけに頼らずに、現場と現物を直接自分の五感で確認する考え方である。BI利用も、現認主義が基本となって初めて生きてくる。
現認主義が重要であることは、従来の業務報告のほとんどが「報告のための報告」で、偏った情報であることから分かる。現場や現物を確認していれば、報告は都合の良い内容が多く、事実に忠実でないことが分かる。筆者が地方の工場にいた時、現認主義の権化のような事業所長がいた。製造現場や倉庫、そして営業の第一線や顧客まで時間があると出向いて、自ら現場と現物を確認して回った。部下に形式的な報告など一切求めなかった。その分本社への足が遠のいたので、出世には不利だと噂されたほどだ。しかしその事業所長時代は、工場全体のモラルは上がったし、改良/開発商品が次々と世に出た。業績も良かった。
まず現認主義がベースにあり、その上でトップが積極的に関与して構築したBIを自ら利用することで、無意味な報告が不要になる。その成否は、トップの心掛け次第で決まる。
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