SOAでシステム間連携を簡素化、BPMも視野に入れる出光興産:BEA Industry Analyst and Media Summit 2007 APAC Report(2/2 ページ)
「BEA Industry Analyst and Media Summit 2007 APAC」で、石油大手の出光興産がSOA導入の取り組みについて紹介した。同社システム総合研究所の山村所長は、BPMによる継続的な業務改善も思い描いている。
さまざまなシステム開発のプロジェクトが業務要件を固めてくると、その中からどのプロジェクトにも横断的に共通化できる部分を洗い出し、別途「共通プロジェクト」として進めた。
「業務アプリケーションはユーザー部門の要求を満たすべく適材適所で考えなければならない。.NETもあれば、SAP R/3やOracle Applicationsもある。システムの“適材適所”を“乱立”にしないためには、ミドルウェアを共通化し、インフラで何とかしなければならない」(山村氏)
基本的には、業務アプリケーション以外のインフラ部分が共通プロジェクトの下で再構築されていったわけだが、「開発方法」「管理方法」「システム間の連携方法」などで課題にぶつかる。
3番目の課題であるシステム間の連携だが、それぞれは類似しており、標準化することで簡素化やコスト削減が図れないか考えた。システム総合研究所は、ここにSOAの考え方を適用し、ESB(Enterprise Service Bus)であるBEA AquaLogic Service Busを導入することにした。
SOAは「通訳」
3文字略語の弊害を懸念する山村氏は、各システム間のデータ連携を言語の異なる人同士のコミュニケーションにたとえる。文字コードも違えば、商品コードも違う。リアルタイムに連携可能なシステムもあれば、バッチでしか連携できないホストもある。従来のシステム間連携では各システムごとに会話したい言語の通訳をすべてそろえる必要があったが、世界の標準言語である英語というバスを介して会話をするようにすれば、英語との通訳だけで済むわけだ。
「誤解を恐れずに言えば、SOAは英語との通訳だけで済むようなもの」と山村氏。
つまり、複数の異なるサブシステムとERPシステムが連携する場合も、ERP側のインタフェースは1つで対応できるし、バッチ処理だったレガシーシステムがオンラインに変わったとしても、ERP側に変更を加える必要はない。
出光興産によるSOAへの取り組みは、早くも効果を見せている。SOAによって連携基盤を構築する以前は、1つのシステム間連携を実現する平均工数が4だったが、当初こそ7の工数が掛かったものの、プロジェクトを重ねるごとに改善され、現在では計画どおりの1.5まで工数削減できた。
また、標準化によって連携数そのものが約3割減るなど、工数以外の効果も高いという。
基幹システムの再構築は2008年に完了する見通しだが、早くも山村氏は業務アプリケーションそのもののSOA化も思い描いている。狙いは、ビジネスプロセスをモデル化し、BPMによって継続的な業務改善を進めることだ。
「これまでにもあった手法だが、機が熟してきた。SOAでシステム開発は新しい時代に入った」と山村氏は話す。
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