攻殻機動隊の世界がここまで現実に――バーチャルリアリティ最前線(2/2 ページ)
開催中の産業用バーチャルリアリティ展(IVR展)では、3D映像に“触れる”ことができる「Tangible-3D技術」など、未来を感じさせる展示が多く存在する。ここでは厳選して3つ取り上げよう。
クリエイターの観点からの出展――日商エレクトロニクス
日商エレクトロニクスのブースでは、こちらも先日発表した「BlueBox 2D-3D変換サービス」が紹介されていた。
立体映像を表示するためには、ディスプレイ側にもさまざまな工夫が求められるが、一方で、映像を作成するのも一苦労である。特に、実写やCG、アニメーションなど既存の2D映像を立体映像にするには、それぞれに奥行きマップ(Depth Map)と呼ばれる情報を付加していかなければならない。1秒間に30フレームあるとして、そのフレームごとに情報抽出を行い、Depth Mapを付加して……クリエイターからすれば非常に気の遠くなる作業だ。
今回日商エレクトロニクスのブースで展示されていたPHILIPSの裸眼立体視ディスプレイは、5方向から立体映像が見えるようレンチキュラーレンズを工夫するなど、裸眼立体ディスプレイの成熟度は高まっており、それに伴って2Dから3Dへの変換という需要も少しずつ高まりつつある。上述のBlueBox 2D-3D変換サービスは、こうした需要に対応するため、クリエイターの手間を軽減するものである。
仕組みとしては非常に簡単で、2Dから3Dに変換するソフトウェア「WOWvxスペーサー」とさまざまな処理を行ったりストレージとして利用するアプライアンス「BlueBOX」を中心に構成される。WOWvxスペーサーは、従来の情報抽出の手間を大きく軽減するもので、かなりアバウトに範囲を選択しても、ソフトウェア側で輪郭抽出などを行い、3D化すべきものを判別してくれる。しかも、最初のフレームで付与されたDepth Mapは、そのシーンが続く限り維持されるという。イメージとしては、モーショントゥイーンのような手軽さで、2Dから3Dへの変換を行えるということになる。
同社では、データ変換のサービスを提供するほか、時間決めでこのサービスを利用できるレンタルルームの貸し出しなどのソリューションを検討しているという。
4Kと3Dを融合させたビジネスへの期待
最後に紹介するのは、フルHDTVの4倍以上となる885万画素を持つ超高精細ディスプレイデバイス「4K SXRD」を2台利用した立体視システムを展示していた日本SGI。4Kの大迫力もさることながら、それが立体視で楽しめるというのは圧巻の一言に尽きる。
HDの世界がようやく普及期に入った昨今、すでに先進的なプレーヤーは4Kの世界に目を向けている。例えば映画業界を例に挙げると、ハリウッドは4Kによるデジタルシネマを強力に推進しており、それに加えて3Dによる視聴環境の構築を着々と進めている。それに対して日本では、映画館側の対応の遅れもあり、デジタルシネマはいまだトライアル的な位置づけとなっており、コンテンツ産業での立ち遅れが否めない。
飛行機や潜水艦の登場が、それまでの平面戦争を立体戦争に変化させたように、新しい戦略・戦術が世の中を大きく変えることは歴史が証明している。日本においても、4Kと3Dを融合した新たなビジネスの登場を期待したいところだ。
関連記事
- 「感じる義手」は“ルークの義手”にどこまで近づけるか
映画「スターウォーズ/帝国の逆襲」のラストシーンで、ルーク・スカイウォーカーが義手を装着しているシーンをご存じだろうか。想像するに“ルークの義手”は自分の手と変わりない感覚を得られるに違いにない。そのような「感じる義手」を目標として、人間の神経と義手とを接続する神経インタフェースの研究が進められている。 - 企業向けバーチャルリアリティ・システムの今――IVR展
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.