勝利の方程式、崩壊――大波乱のImagine Cup 2007:Imagine Cup 2007 Report
55チーム中、第2ラウンドに進めるのはわずか12チームという過酷な勝負が続くImagine Cup 2007ソフトウェアデザイン部門。いよいよ第2ラウンドに進出するチームが決定した。果たして日本は?
「オーストリア、ジャマイカ、ギリシャ……」――ソウル市の東部に位置するシェラトン・グランデ・ウォーカーヒルの地下、国名が呼ばれるたびに驚喜の声が響き渡る。国名を読み上げているのはImagine Cup 2007のコンペティション・マネジャーを務めたエマニエル・オムニサンティ氏、来年のImagine Cup 2008のコンペティション・マネジャーを務めるロジェリオ・パニガッシー氏。驚喜の声を上げているのは、Imagine Cup 2007のソフトウェアデザイン部門に参加した55チーム。そう、同部門の第2ラウンドへ進出するチームの発表だ。
55チーム中、第2ラウンドに進めるのはわずか12チーム。全体の8割以上が第1ラウンドで姿を消すという厳しいラウンドだけに、オムニサンティ氏とパニガッシー氏に名前を読み上げられたチームのメンバーには安堵(あんど)の表情がありありと見て取れる。
「……、ウクライナ、アイルランド、チェコ……」。残りの枠が少なくなる中、呼ばれていないチームにはあきらめと切望が混じり合ったような空気が漂い始める。それは日本代表チームも同様だった。
そして終わりはあっけなくやってきた。「……セルビア、オランダ」。最後の国としてオランダが呼ばれた瞬間、日本代表の挑戦は終わった。
グループA | オーストラリア、トルコ共和国、イギリス、北米、ジャマイカ、スペイン、インド、アルゼンチン、中国 |
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グループB | スロバキア、マルタ共和国、スリランカ、ロシア、香港、ドイツ、ポーランド、インドネシア、韓国 |
グループC | エジプト、フィンランド、タイ、台湾、ウクライナ、日本、デンマーク、フランス、スロベニア |
グループD | ブラジル、パキスタン、イタリア、ベルギー、南アフリカ、サウジアラビア、アイルランド、ハンガリー、オランダ |
グループE | マレーシア、ノルウェー、メキシコ、ポルトガル、ボスニア・ヘルツェゴビナ、チェコ共和国、ブルガリア、セルビア、ルーマニア |
グループF | アルジェリア、ニュージーランド、シンガポール、オーストリア、エストニア、クロアチア、フィリピン、ギリシャ、アラブ首長国連邦、エクアドル |
ステージに登壇し、喜びを分かち合う12チーム。会場からは惜しみない拍手が贈られる中、日本チームの方に目をやると、意外にも表情は明るい。全力を出し切った彼らの顔には後悔の色はみじんもなかった。
ふたを開けてみれば番狂わせといってもよいであろう結果となった第1ラウンド。ブラジルやイタリア、日本といった昨年のファイナリストは中国をのぞけばことごとく敗退した。ベストプラクティスなどどこ吹く風だ。時代は常に変化していることを感じさせる。
美麗なインタフェースのタイチーム
日本が含まれていたCグループ。プレゼンテーションを非公開にしていたフランス、インタフェースが優れていたと評判のタイ、そして日本の3チームのいずれかが通過するのではないかという記者の予想は、タイこそ予想通りだったものの、残りの一枠はウクライナが獲得した。
タイのソリューション「Livebook」は、Webカメラを利用して書籍のページをキャプチャーし、その文字解析を行うとともに、その意味を抽出して百科事典データベースなどからその意味に相当する画像や動画を取得する。それによって文字とその意味するものをより直感的に理解できるというのが大きな特徴だ。.NET Framework 3.0に含まれるユーザーインタフェースサブシステムであるWindows Presentation Foundation(WPF)を活用したユーザーインタフェースは秀逸だった。
それぞれの単語などの意味を抽出し、それに相当する画像などをオーバーレイで表示しているところ。これがハリー・ポッターの書籍であることが分かる。なお、低スペックのPCでWPFの利用ができない場合も考慮し、2Dのレンダリングでかつ解像度が低いものを用意することをビジネスモデルに組み込んでいた
同ソリューションは、音声を用いた学習にも役立つとタイチーム。例えば、「Tree」「Tea」「Three」といった単語を用意し、マイクに向かって発音すると認識エンジンで認識した発音の単語にフォーカスし、画像が取得される。これにより正確な発音の学習が進むという。
日本代表は敗れたが、激闘を勝ち抜いた12チームによる第2ラウンドはさらに激しさを増していく。引き続きソフトウェアデザイン部門の動向を追うとともに、ほかの部門や日本代表チームの素顔に迫っていきたい。
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