創業10周年を迎えたサイボウズ、国産ソフトメーカーに新たな息吹:ITトレンドの“眼”
グループウェアを中心に急成長を遂げてきたサイボウズが創業10周年を機に、新たな事業戦略を展開し始めた。「これからも技術にこだわりたい」との決意表明に、国産ソフトメーカーとしての新たな息吹を感じた。
「日本のソフト会社は本当に技術を追求しているところが少ない。私たちはあくまで技術にこだわりたい」――。サイボウズの青野慶久社長は8日に開いた記者会見でこう強調した。同会見はこの日、同社が創業10周年を迎えたのを機に開いたもので、青野氏とともにグループ企業12社のトップも顔をそろえた。折しも昨年度(2007年1月期)で連結売上高100億円を超えた同社は、今や国産ソフトメーカーの“元気印”の代表格とも言える。
会見ではこれまで10年間の活動を振り返るとともに、新たな事業戦略として、製品ラインアップを顧客企業の規模によって2つのブランドに分ける「2大ブランド化」と、ユーザーコミュニティーの新設など顧客との関係強化を図る「リレーション・マーケティングの強化」を打ち出した(関連記事)。
また、主力製品の1つである中小規模向けグループウェア「サイボウズ Office」の次期バージョンを今年度(2008年1月期)内に商品化することを表明。さらに、2005年8月に設立したサイボウズ・ラボで開発を進めてきたアクセスログ共有サービス「Pathtraq(パストラック)」の内容も初披露した。
目指すは打倒!グーグル
振り返れば1990年代までは、グループウェアといえばIBMの「Lotus Notes/Domino」、マイクロソフトの「Exchange」といった世界ブランドの製品が、日本市場でも激しい勢力争いを繰り広げていた。その2大勢力が幅をきかせていた市場に新風を吹き込み、2000年に入って急速に頭角を表してきたのがサイボウズだ。
1997年8月、愛媛県松山市のマンションの一室で産声を上げた同社は、「簡単・便利・安い」をモットーに、業務システムを簡単に実現できるような製品開発とサービス提供に取り組んできた。その結果、同社のグループウェアは今や2万5000社以上、250万人を超えるユーザーに利用されるまでになった。それに伴い、会社の規模も連結で従業員数700人以上になり、2006年7月には東証1部上場も果たした。
ちなみにサイボウズ(Cybozu)という社名の由来は、「電脳」を意味する「cyber」と、親しみを込めて子供を呼ぶ「坊主(bozu)」の組み合わせによる造語で、「電脳社会の未来を担う若者たち」という意味を込めているとのこと。ITベンチャーらしい軽妙なノリだが、そのベースには市場のニーズを読み取る鋭い感性と技術開発に対する強いこだわりがある。
サイボウズの企業イメージで象徴的なのは、何と言っても経営トップである青野氏のキャラクターだ。今年で36歳の同氏だが、その風貌は社名の由来ともオーバーラップする。会見では自らも「創業時はよく高校生に間違われたが、最近は新入社員に間違われる」と語って笑いを誘ったが、筆者にはこの発言が青野氏の「フレッシュさ」へのこだわりにも聞こえた。「東証1部上場企業になったが、まだまだ面白いことをいっぱいやるので期待してほしい」。こんな発言も、同氏ならではの親近感をかもし出していた。
そんな青野氏から、以前にインタビュー取材でこんな話を聞いたことがある。「目指すのは打倒グーグル。同じIT分野の技術志向の強い会社として、追い付き追い越せという意気込みで挑みたい」。今のサイボウズには、かつて世の中に勢いよく登場したころのサン・マイクロシステムズやグーグルにも似た新しい感覚があるように思える。
1990年代以降、とかく国産ソフトメーカーには元気がないと言われてきた。今後グローバルにも打って出るというサイボウズには、ぜひともそんな閉塞感を払しょくしてもらいたい。
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