責任範囲を明確にせよ!:シスマネ必携! 運用管理ルールブック(2/2 ページ)
上手なIT運用管理のノウハウは、豊富な運用実績と的確な情報蓄積、見直しを繰り返してきたプロに聞くのが一番。ITアウトソーシング事業者は、そのノウハウ集の中で、ユーザー側と運用側との明確な職責分離を行うべきだと記している。
ルール3:決断はユーザー自身の役割とすべき
これは、アウトソーシング事業者にとって、ユーザーとのトラブルを避け、良好な関係を維持するために重要な意識だ。これは、社内の情報システム部門にも適用できるノウハウでもある。
本来、システムは、ユーザーのビジネスのために存在している。管理者は、その運用を代行しているにすぎない。しかし、しばしば、そのことを明確に意識しておらず、「勝手に決めてよ」という指示を出すユーザーもいる。判断を委ねられ、困った経験を持つ管理者も少なくないだろう。だが、その判断が間違えていたら、いったい誰が責任を負うのだろうか。
もちろん、アウトソーシング事業者でも情報システム部門でも、ITの専門家としての立場からユーザーに対して適切な助言と提案を行うことが必要だ。
ただ、その提案を受け入れるかどうか、そして提案内容を実施することに伴うリスクを引き受けるかどうか。それらはユーザー自身が責任を負うべきものである。つまり、「システムの仕様に関する決断」でミスがあったとすれば、それはユーザー自身の判断ミスであるといえる。
一方、もし運用上のミスなどがあれば、IT管理者側が責任を負うことになる。アウトソーシング契約であれば、そういった責任分解点について説明されているだろう。一方、社内管理者の場合は、システム変更に関する意思決定を何らかの形で証跡として残しておくといった対応が考えられる。例えば、仕様変更の内容を「指示書」としてまとめておき、ユーザー自身が指示を出した形にしておくなどの書式が考えられるだろう。可能であれば、ワークフローシステムでその意思決定プロセスを自動化し、確実な履歴を確保しておくことが望ましい。
責任分担を明確にすることは「トラブル時の責任のなすりつけ合い」への対策になる。責任を回避する理由として、アウトソーシング事業者なら訴訟対策としても役に立つだろう。
しかし、必ずしもネガティブな意味だけではない。余計な責任を押しつけられることがなくなれば、管理者側はシステムに専念できるようになるはずだ。また、ユーザー自身が責任を持つ部分もあるとなれば、彼らの積極的な協力も期待できる。要件定義や仕様決定、さらにシステムの品質や運用品質、そして「使おう」という意識など、さまざまな面で違いが出てくるはずだ。(取材協力:野村総合研究所)
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