作業環境を改善せよ さもなくば日本のエンジニアは壊滅する!:遅れた日本のソフトウェア開発 その原因はここにあり!?(3/3 ページ)
日本のソフトウェアエンジニアの作業環境は、海外企業のそれとまるで異なるとか。ほうっておくと、日本人エンジニアはいずれ、失職する恐れが……。
これを100万行のコードから成るソフトウェアの開発で例えてみる。A社のエンジニアが年間5万行しか書けないと仮定すると、1年の開発期間で製品を出荷する場合、開発人員は20人必要になる。
一方、B社の場合、1人のエンジニアだけで
5万行(A社における1人の生産能力)×26=130万行
のコードを書けることになる。つまり計算上、B社で同じソフトウェアを開発するのに必要な要員はわずか1人ということになる。
もちろん、これはあくまでも数字上の合理性であり、実際に作業はそううまくは進まないだろう。しかし、経験豊富なソフトウェア開発のマネジャーであれば、それはあながち間違いではないと考えるのではないだろうか。なぜなら、チームの人数が少なければ少ないほど、ソフトウェア開発が効率的に進むことを知っているからである。
プロジェクトのサイズを大きくすることの弊害は、ソフトウェア工学の第一人者であるスティーブ・マクコーネル氏の「Code Complete」(日経BPソフトプレス)を参照してもらいたい。同氏は、プロジェクトサイズが大きくなるにつれコミュニケーションのパスが多くなり、ミスコミュニケーションによる問題が増えると指摘している。
もちろんそのミスがバグを生み、結果的により時間とお金のかかるプロジェクトにしてしまうことは自明だろう。「初めて学ぶソフトウェアメトリクス」(日経BP社)には、「多人数プロジェクトは少人数プロジェクトに比べ、平均して7倍の工数がかかる」と書かれている。
油断すると、日本のエンジニアは失職する!?
優秀な人材を採用して高待遇で会社により長く引き留めるというのが、世界で一流といわれるソフトウェア会社のスタンダードになりつつある。今後は、中国やインドの企業もそのスタンダードを採用するだろう。
そのような世界で勝ち残るためには、日本の企業もエンジニアの採用を考え、生産効率を高められる環境を与えるように努力しなければならなくなるはずだ。もちろん、エンジニア自身も十把ひとからげ的な効率向上を目指すのではなく、他人の10倍、20倍もの成果を挙げられるスキルを身に付けるべきである。そうでなければ、数年後には、低賃金でありながらも高い能力を発揮する新興国のエンジニアに職を奪われかねないのだ。
たかはし・じゅいち
1964年東京生まれ。情報工学博士。米フロリダ工科大学にてソフトウェア工学修士、広島市立大学大学院にて情報工学博士をそれぞれ取得。米マイクロソフト、SAP Labs東京にてソフトウェアテストに従事した後、大手民生機器メーカーに(現職)。主な著書に「知識ゼロから学ぶ ソフトウェアテスト」(翔泳社)、「現場の仕事がバリバリ進む ソフトウェアテスト手法」(技術評論社)がある。
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